キャンパス内全面禁煙の総長宣言の先見性 | 重大な社会課題への大学の責務を果たす 日本の著名大規模総合大学としての 「初の挑戦」 |
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「市」に匹敵。 大勢の学生・教職員数と多数の訪問者の存在 |
学生総数 18,167名 教員 2,892名 職員 2,927名 総計 23,986名 +受け入れ研究者数 +支援業務従事者数 +多彩な訪問者数 |
日本を代表する広大なキャンパスの大学 | 東京ドーム約477個分もの 広大なキャンパス敷地面積 |
2010年10月1日の東北大学井上明久総長の宣言は、社会と全国の大規模大学から、驚きと賞賛で受け止められました。
2011年10月1日からの「大学キャンパス内全面禁煙の宣言」の反響です。
小規模な大学や単科大学では、全面禁煙の大学は増えてきています。しかし、所属人数が2万人を越す大規模大学では、分煙や一部敷地の禁煙にとどまるのが現状でした。そこに、わが国を代表する総合大学で、敷地面積が東京ドームの約477個分と日本屈指の広大なキャンパスを持つ東北大学が「大学敷地内全面禁煙」を打ち出したのです。大きな関心を集め、新聞などで詳しく報道されたのも当然の意欲的な宣言でした。
学生・大学院生・教職員と受け入れ研究者、そして大学業務や大学生活の支援業務従事者、さらには大学病院を含めキャンパスをさまざまな用で訪れる人も考えますと、東北大学は、4、5万人の一つの「市」並みの規模に相当します。
つまり、一つの市が市域内での全面禁煙を宣言するような影響の大きさと難しさへ、東北大学は全国のトップを切って挑戦するのです。
『大学は、未来ある若者を健康に社会に送り出す責務があります。それに、東北大学のキャンパスは、誰でもが自由に行き来できる、市民に開かれた大学です。片平の本部キャンパスで憩う親御さんと小さなお子様たちの姿を身近に見るにつけ、タバコの煙の心配のないキャンパスにしたいとの思いがつのりました…』と飯島敏夫東北大学理事。研究と環境安全の担当理事で生命科学者です。
『飯島理事が、井上総長に提案。大学キャンパス内全面禁煙の方向が、東北大学の意思、責務として決定されました。大学トップのリーダーシップによる決断であることは、今後の全面禁煙の実行にたいへん心強いことです。全学挙げての具体的なプログラムが実行され、受動喫煙の被害から非喫煙者を守り、さらに喫煙者への禁煙支援等も、研究総合大学らしいさまざまな知の力が加わった思い切った施策、工夫が実施されていくことでしょう』 。
こう指摘する黒澤一教授は、東北大学病院の敷地内禁煙化にも関わった喫煙問題にも詳しい呼吸器科医です。
『喫煙が原因で日本では毎年十数万人が亡くなっています。受動喫煙に関連した病気でさえ、毎年少なくとも6千人を超える死亡が推定。この事実は看過できません。知の拠点たる大学は、一般社会に先立ちなすべきことがたくさんあります。喫煙習慣とは、ニコチンの依存症、つまり病気です。タバコを吸うと気分が落ち着いたような気になるのは、ニコチンが肺から血流を介して脳に到達し禁断症状が切れ味よく治まるからです。喫煙者では抱えるストレスの大部分を禁断症状が占めるため、禁煙によってかえってストレスは大幅に軽減し、安らかな気分になれます。禁煙外来で多くの患者さんが実体験されることです』。
黒澤教授は、東北大学の保健管理センターとも協力、これからの禁煙支援を担うお一人です。
『敷地内全面禁煙に対して全学的な了解が得られました。これから、具体的なプログラムを着々と実施してゆきます。とにかく地道に、喫煙の健康被害の理解を広げ、喫煙者の意識を変えてゆく、このことが大事でしょう。禁煙の切っ掛けをさまざまに提供、禁煙の動機付けと実行を大学として支援する。大切な学生・教職員の健康を守るためです。この、誰でもが納得できる観点から、大規模大学が注目する東北大学ならではの種種の活動をこれから計画し、展開してまいります』。
実務の重責を担う武内由美環境・安全推進室長の思いです。
すでに2010年の12月から、東北大学生活協同組合はタバコの販売を全面的に中止しました。東北大学とともに健康で安全なキャンパスライフを支えることが使命、との理由です。大きな売上げ減が予想されますが、さすが、というべき決断でしょう。東北大学の1年、2年生からは、大学内禁煙を求める声が強くなっていました。東北大学の個々の構成員からも広い支持を得つつあり、いわば個人レベルからの全面禁煙の動きも高まっています。しかも、2003年(平成15)には「健康増進法」が施行されています。このような状況においての、東北大学の先駆的な「大学キャンパス内全面禁煙」宣言。他の大規模大学から大いに注目され刺激を与えています。
東北大学の全面禁煙実現プログラムが、いつしか「東北大学方式」として全国の大規模大学の有益なモデルとなることでしょう。
さて、今年の10月1日からは、市民の皆様にこうお話しできるに違いありません。
『タバコの煙や臭いのない、きれいな空気を深呼吸したくなったら、どうぞ身近な東北大学のキャンパスにお越しください』と。