「萩丸」の開発 東北大学創立100周年を記念し、また国際学術交流や情報交換の場の話題づくりとして東北大学オリジナルの日本酒「萩丸」を製造した。 この企画は、酒米の育種から栽培、醸造管理、蔵元、ネーミング、販売ま で、一貫して東北大学関係者が携わり、国際学術交流に、学内外の祝宴に、 また卒業生の集いに東北大学の話題の糸口を提供すべく実行された。
1.酒米の育種 宮城県古川農業試験場において、松永和久古川農業試験場副 場長(東北大学農学部S46年卒)を中心に、酒造好適米「山田 錦」を母に、「東北140号」を父として誕生したF1に「東北 140号」を母として戻し交配して作られた。1997年に「水稲農 林351号」として農林省に登録され、「蔵の華」と命名された。 「蔵の華」は大粒で、心白の発現が少なく、低タンパク質の ため、酒造特性に優れ、かつ耐冷性、いもち病抵抗性強の酒米 である。
2.酒米の栽培 東北大学農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センタ ー(宮城県鳴子町)と同生命科学研究科附属湛水生態系野外実 験施設(宮城県鹿島台町)で三枝正彦附属複合生態フィールド 教育研究センター長(農学部S41年卒)を中心に栽培された。 寒冷地のフィールドセンターでは初期成育確保、冷害回避のた めにポット苗栽培が行われた。 1等米89袋、2等米6袋計95袋(2850kg)を収穫した。
3.東北大酒「萩丸」の製造 東北大学農学研究科(秋葉征夫研究科長、農学部S 41年卒)が、(株)一の蔵(鈴木和郎代表取締役会長 、農学研究科修士S40年修了)に純米酒大吟醸の製造 (720mL生酒500本、火入れ酒3,300本)を委託した。 仕込み日程 : 酒母仕込み(2005年12月12日) 添え仕込み(同年12月23,25日) 留め仕込み(同年12月26,28日) 上槽 (2006年1月26,27日) 生酒瓶詰 (同年2月10日)
4.麹菌と酵母の選定と酒質 麹菌および酵母の選定、醸造管理は、五味勝也東北大学農 学研究科生物産業創生科学専攻教授の指導下で行われた。 麹菌および酵母:麹菌は通常の吟醸酒用種麹(ビオック社 製)、酵母はカプロン酸エチル生成が高く、酸生成が少な い(=純米酒では酸が多くなる傾向にあるため、酸生成能 の低い酵母が適している)協会1601号を使用。これに酢 酸イソアミル生成能力の優れた協会9号酵母を合わせて使用 することにより、バランスのとれた吟醸香をもつ純米大吟 醸酒を製造した。 酒質:吟醸香があり味にふくらみを持った純米大吟醸酒が 製造できた。
5.東北大酒「萩丸」の命名 この新酒の名を、東北大学100周年記念実行委員会お よび農学部・農学研究科関係者から公募し、全44点の応 募の中から、「萩丸」が選ばれた。 萩は宮城県の県花であり、仙台にとってもなじみの花 である。また東北大学100周年記念事業の一環として「 萩が品格をもって世界に大きく広がっていく動き」を表 現した公式ロゴマークが2005年4月に作成された。応募 の中に萩を使った名称は多数あったが、その中でも「萩 丸」は東北大学のロゴマーク同様に、丸い地球をイメー ジしていること、国際交流に相応しい呼び名であること から選定された。 東北大酒「萩丸」の命名発表会は2005年12月27日に 行われた。
6.生産管理、販売システム 「萩丸」の生産管理、販売システムについては、工藤昭彦農 学研究科資源環境経済学分野教授、副研究科長(農学部S44年卒 )が立案し、東北大学生活協同組合農学部店を通じて、主とし て東北大農学部・農学研究科を始めとする東北大学関係者に販 売することとした。 販売は2005年2月23日からとし、在庫があれば一般の方も東 北大学生活協同組合農学部店で購入できる。 価格は、生酒と、化粧箱入り火入れ酒は、1本(720mL入り )3,000円とし、化粧箱無しの火入れ酒は同2,800円とした。