片平キャンパス建物見学ツアーの様子(2009年10月10日・11日)
「昔ウチの近所にあった大学の建物は、一体何だったのでしょう」
「学生時代に祖父が仙台で住んでいた場所を訪ねたいのですが…。」
「仙台はいつから『学都』と言われるようになったのですか?」
「むかし大学の前にあったあるお店の写真はないでしょうか…」
私の勤務する東北大学史料館には、このような市民の方々からの問い合わせが、毎日のように寄せられます。私たちはそのつど、「史料館」の書棚や倉庫の中から、情報を提供したり、資料を紹介したりしています。
「東北大学史料館」は、東北大学のさまざまな活動記録を歴史資料として保存・公開する、東北大学の「大学アーカイブズ」です。「アーカイブズ」という言葉は近年よく耳にするようになりましたが、もともとは、ある組織がその「仕事」のために作成し保存している過去の記録、およびこれを保存・公開する施設を指す言葉です。東北大学史料館は、その前身である「東北大学記念資料室」から数えるとわが国で最も古い歴史を持つ「大学アーカイブズ」で、現在は、片平キャンパス内の旧東北帝国大学附属図書館を拠点に活動しています。館内には閲覧室や展示室が設けられ一般に公開されており、また企画展示や講演会などのイベントも開催しております。昨年は作家・北杜夫の東北大学在学時代を扱った企画展「マンボウ青春記の仙台」展や北氏ご令嬢斎藤由香氏の講演会を開催し、そこにも多くの市民の方にご参加いただきました。
東北大学史料館が扱う「歴史資料」は、公文書から学生サークルのパンフレット、記念写真のようなものまで、実にさまざまです。利用者には、もちろん歴史の専門家もおりますが、一般の人々も少なくありません。実は、このような「誰もが利用できる」という点にこそ、「アーカイブズ」の本質があります。
私たちは、そうしたさまざまな方々の資料調査をお手伝いしていますが、もちろん中には簡単に答えが見つからない難題にぶつかり考え込んでしまうこともあります。苦心の末、わずかな手がかりを資料の中に見つけ、それを紹介することが出来たときの感激は、自分の仕事が、単に「歴史資料」の保存というだけでなく、それを今に生きる人々に引きあわせる、言い換えれば、歴史と現代人の間を取り持つ仕事なのだ、ということを教えてくれます。
「学都」仙台において、東北大学が地域社会・住民とさまざまな接点を持ちながら歴史を重ねてきたことは、動かしようのない事実です。東北大学史料館が扱う「アーカイブズ」には、そうした東北大学と地域社会の関わりが豊かに反映されています。また再現することのできない「歴史」を確かめ、これを他人との間で共有することは、意外に難しいものです。だからこそ、その手がかりとなる「記録」を適切に保存し広く公開していくことが必要なのであり、「アーカイブズ」と呼ばれる施設の使命は、そこにあるのだと思います。
東北大学が「アーカイブズ」を整え、大学の歴史を地域社会に広く「共有」してもらえる環境を作っていくこと。それは地域社会の中における東北大学の責務であり、また大学と地域社会の関係を未来に向かって構築していく礎となるものだと思います。
創立100周年記念「東北大生の一世紀」展(2007年7月)
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