シリーズ◎地球温暖化の将来1 地球温暖化に直面する人類 花輪 公雄◎文 text by Kimio Hanawa

 地球温暖化とは

 地球温暖化とは、大気中に「温室効果気体」が増えることによる、地表面より高さ約十キロメートルまでの対流圏の気温上昇のことを言います。温室効果気体とは、地表面が放射している赤外線を吸収し、再び四方へと赤外線を放射する気体のことです。水蒸気、二酸化炭素(CO2)、一酸化二窒素、メタン、フロンガスなどがこの仲間です。大気中に温室効果気体があると、地表面に再び熱(赤外線)が戻って来ますので、地表面がより暖まり、結果として対流圏の大気の気温が上昇します(図参照)。また、空気はよく混じりますので、温暖化は全地球的(グローバル)現象となります。一方、この機構で対流圏が暖まるときは、成層圏(対流圏よりの上、高さ約五〇キロメートルまでの層)の気温は逆に下がります。実際、地表面気温の上昇、成層圏気温の下降が観察されています。

図) 過去150年間の地表面気温の変化(横軸は年、縦軸は気温)。黒の点は年平均値、濃い青色の線は変化を滑らかにしたもので、薄い青色の帯はその「確からしさ」が90%の範囲。図中の直線群は、その直線の長さの期間で元の変動を直線近似したもの。最近の期間になればなるほど、直線の傾きが立っていること、すなわち気温が急上昇していることを示す。IPCC(2007)評価報告書より

 地球温暖化の認識

 一八九六年、スウェーデンの化学者S.アレニウスは、石炭や石油の消費が進めば、CO2が増えて地球表層は暖まっていくだろうと、地球温暖化を理論的に予言する論文を書きました。一九五〇年代半ばになると、米国の研究者たちは実際に大気中のCO2濃度の計測を始めました。彼らは、計測開始から間もなく、CO2濃度は確実に増加していることを示しました。そして、二〇〇七年、国連の一機関である「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、「人為起源の温室効果気体により、二〇世紀半ば以降の世界平均気温の上昇のほとんどがもたらされた可能性が非常に高い」と、公表しました。IPCCでは、この「可能性が非常に高い」という表現を、九〇~九五%の「確からしさ」をもつときに使用しています。アレニウスが予言した地球温暖化が、百年余りのときを経て、九〇~九五%の確率で人為的要因によるもの、と認識されたのです。

 IPCC評価報告書と懐疑論者

 IPCCには多数の研究者が参加しています。執筆者は五〇〇名程度ですが、執筆に協力したり、原稿をチェック(査読)したりする人たちも加えますと、数千名の人たちが関与しています。評価報告書は、長い時間をかけて慎重な検討の結果として公表されたものです。しかし、IPCCの結論に異議を唱える「懐疑論者」と呼ばれている人たちもいます。彼らは、疑義は提出しているのですが、観察されている多くの現象に対する合理的な説明を提出してはいないことは残念です。もちろん、IPCCの結論もまずは疑ってかかる、という態度は間違いではありませんし、常にそのような意識を持つことも大切です。地球温暖化の研究は決して終わったわけではありません。本学には多くの地球温暖化に関する研究を行っている人たちがおりますので、さらなる貢献を期待したいものです。

 地球温暖化の抑制に向け

 進行しつつある地球温暖化は人類の生存にとって阻害要因である、との立場に立てば、地球温暖化防止のために行動を起こす必要があります。身の回りからの活動(ボトムアップ)と、社会システムを変える活動(トップダウン)、双方のアプローチが必要です。私自身は、「今こそ、化石燃料を大量に消費する現代文明を見直すべきだ」と考えています。

花輪 公雄 花輪 公雄(はなわ きみお)
1952年生まれ
現職/東北大学大学院理学研究科 教授
研究科長・学部長
専門/海洋物理学、大規模大気海洋相互作用
http://www.pol.gp.tohoku.ac.jp/~hanawa/

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