東北大学のオープンキャンパス

大学教育の潮流
倉元 直樹=文
text by Naoki Kuramoto
様変わりした進路選択
 『まなびの杜』を手に取ってご覧になっているあなた、失礼ですがおいくつでしょうか?18歳くらいの頃、「大学」にどのような印象をお持ちでしたか?60代以上の方には、限られた人が行く所だったかもしれません。40代前後であれば、偏差値ランク表と模試の成績とを見比べた経験をお持ちかもしれません。
 今は、大学全入時代と言われています。大学進学希望者は、どこかには入学が可能な時代です。この現象は数十年の間に起こった大きな変化ですが、実際には大きく変わったことと変わらないことがあります。
 変わったことの一つは、大学に関する情報の量です。高校には、大学や教育産業から洪水のようにダイレクトメールが送られてきます。開封しないまま、捨てるべきかどうかを即時に判断できることが、進路指導教員の条件だ、という冗談があるほどです。以前は、進路選択のための最重要の情報は偏差値でした。今は、受験生には、膨大な情報から、自分が描く将来設計に合った進学先を決めることが求められています。

オープンキャンパスの風景
 東北大学では、1999年から毎年、7月末の2日間、主に受験生対象の「オープンキャンパス」を行っています。大学で行われている研究や教育活動を分かりやすく紹介する催しです。当初、6,300人ほどの規模でしたが、年々拡大しています。特に、2007年は前年から約9000人も増え、約36,000人の参加者を得るまでに成長しました。国立大学では圧倒的に日本一、私立大学を入れても五本の指に入る規模です。大型バスで約400台、東北各地だけでなく、遠くは関東や新潟からも来ていただいています。扇坂にバスが連なる様子は壮観です。近隣に御迷惑をおかけしないように努力していますが、大切な催しですので、お許しください。
 写真は医学部保健学科の企画の一つ、実習体験の風景です。この2日間は、このような企画や模擬講義、研究概要の展示説明などが、キャンパスの各所で繰り広げられます。

写真:東北大学医学部保健学科オープンキャンパスの様子


オープンキャンパスの役割
 東北大学のオープンキャンパスは、受験生が自分の進路を探すための最高の機会となっています。今では、東北大学の新入生の40%以上が、一度はオープンキャンパスを訪れ、大学の中身を知ってから進路を決めています。東北6県の出身者に限れば、約3分の2がオープンキャンパスの経験者です。まさに「百聞は一見に如かず」です。
 先ほど、変わらないこともある、と書きました。それは、全入時代になっても多くの人が魅力を感じる大学に入学するには、相応の努力と実力が求められるということです。ありがたいことに、東北大学も多くの受験生が魅力を感じる大学の一つです。新入生の多くは、オープンキャンパスで自分のやりたいことを見つけ、その実現に向けて努力を積み重ねてきた若者です。ともすれば、単調で辛い勉強の毎日ですが、オープンキャンパスはその先に現れる光を垣間見せる機会となっているのです。

オープンキャンパスへの招待
 2007年、100周年を迎えた東北大学。時代を重ねても輝き続けるためには、歴史をつなぐ新しい力が必要です。読者の皆様も、是非、オープンキャンパスで東北大学の魅力に触れてください。2008年は7月30、31日に開催する予定です。


くらもと なおき

1961年生まれ
東北大学高等教育開発推進センター准教授
専門:教育心理学、社会心理学
http://www.adrec.tohoku.ac.jp/admissions/kuramoto_lab/index.html

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