まなびの杜44号
東北大学大学院薬学研究科  附属薬用植物園シリーズ2
トウキ
 初夏の薬用植物園内には、独特の香りを持つ植物が多数栽培されています。なかでもセリ科の植物のトウキ(当帰)は、姿を見つけるよりも先に芳香からその存在がわかるほどの強い香りを放っています。
 6月頃に花茎を伸ばして傘状に多数の小白花をつけ、しばらくすると結実します。全草にルグスチィリド、ベルガプテン、シメンなどの精油成分が含まれており、根を生薬として用いてきました。
 古くから便秘、冷え性などに対し血液循環促進の効能があるとされ、身体をあたため貧血症状を改善する当帰芍薬散(しゃくやくさん)などの漢方薬に使用されています。当帰の名は、子供に恵まれない女性が実家に戻って当帰を服用して体を温め、血行がよくなって婚家に帰宅した(まさに帰らんとす)ことに由来するとの説があります。
 現在、薬に使われるトウキには、中国原産のカラトウキ(唐当帰)とヤマトトウキ(大和当帰)などがあり、同様の目的に使用されているようです。写真はヤマトトウキで、花が終わると、実が熟すまで線香花火のような形をしています。
東北大学大学院薬学研究科 山添 康・大場 慶司・早坂 英記