法と市民をつなぐ学生たち
稲葉 馨=文
text by Kaoru Inaba

 わが法学研究科では、地域社会に対する還元・地域との結びつきを密にする活動の一環として、従来から、学生による法律相談と模擬裁判に力を入れてきました。
そこで、この紙面をお借りして、それぞれの代表者の活動ぶりを紹介します。

【東北大学無料法律相談所】
 東北大学法学部生による伝統ある自主ゼミの1つです。その歴史は古く、1928年に宮城県社会事業協会無料法律相談所として発足したのが始まりです。活動目的は、第一に、法的知識がないために困っている一般の市民の方々の手助けをすること、第二に、当相談所に所属する学生自身のために、実際に発生している法律問題に取り組むことで、机上だけではできないより高度な学習をさせていただくことです。原則として月曜日から金曜日までに電話で一般市民の方からのご依頼を受けており、その上で、毎週土曜日の午後に法学部内で法律相談を行っています。実際に相談にこたえるのは4年生ですが、難しい問題を含んだ相談の際には、法学部の教授が「主審」として同席することもあります。活動期間は、4月から7月と10月から1月までですが、毎年平均して80件ほどの相談があります。また、夏期休業中、東北6県のどこかに赴いて「出張相談」も行っています(2007年は秋田県横手市で実施)。
 当相談所の特徴は、料金が全くかからず、相談時間にも制限がないということです。ですから、法律問題でお困りの方は、どんなに些細なことでも、納得がいくまでじっくりと相談をすることができます。このように、無料法律相談は、学外の一般市民の方々を対象に法律相談を行うことを通じて、社会貢献に寄与すると共に、学生自身の生きた法律の学習のための絶好の機会を提供してくれるものとなっています。法律相談のお問い合わせは、電話022‐795‐6243へ。
(代表/法学部四年・森山裕喜)

「無料法律相談所の出張相談」東北大学創立100周年事業の一環として行った模擬相談の風景
「無料法律相談所の出張相談」
東北大学創立100周年事業の一環として行った模擬相談の風景


【東北大学法学部模擬裁判実行委員会】
 さまざまな社会問題の中から毎年1つをテーマとして取り上げて研究し、その成果を裁判劇として製作・公演することを主な活動としています。1952年のスタートから数えて2007年で56年目を迎えました。仙台の秋の恒例行事として多くの市民の皆様に親しまれ、毎年約1000人の方にご覧いただいています。学生の単なる研究発表として終わることなく、観客の皆様に取り上げたテーマについてさらに関心を持っていただくため、テーマに関するパンフレットの制作にも力を入れています。1年生が演者を、2年生が3年生のサポート的な役割をしつつ1年生を支え、3年生は中心的な役割をこなすなど、法学部の学生約60名が役割分担をして、演者からシナリオ制作、広報活動に至るまでの全てを行っています。舞台に作った法廷セットのリアルさには、市民の皆さんが驚かれます。
 2007年10月の公演では裁判員制度をテーマにしました。新制度の是非を問うのではなく、施行まで2年を切った今だからこそ考えていただきたい刑事裁判の問題点や知っておいていただきたい新制度ならではの仕組みがあるということをお伝えしたく、懸命に励んできました。また、2006年は少年非行問題、2005年は欠陥住宅問題といったように、その時々に合ったテーマを選んで公演しています。今後も伝統を守り、ますます市民の皆様にとって身近な存在となれるよう活動していきますので、ぜひとも1度公演においで下さい。
(代表/法学部3年・小松枝理)

「第55回模擬裁判公演」(2006年)
「第55回模擬裁判公演」(2006年)




いなば かおる

1952年生まれ
東北大学大学院法学研究科教授(研究科長)
専門:行政法・地方自治法
http://www.law.tohoku.ac.jp/

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