現役に寄せる期待 |
Message from OB |
丸森
仲吾=文 |
私が東北大学を卒業したのは、1955年ですが、仙台に本店がある77銀行に就職したこともあって、就職以来この方50年近くもの間、仙台を離れたことがなく、あまり母校を意識して生活することがありませんでした。ちょうど、空気や水が私達の回りにいつもあって、近くにありすぎるが故に、その「ありがたさ」を意識することがあまりないのと同じ感覚です。そんな中で、野球部の縁だけは現在に至るまで継続してきました。毎年6月と12月になると決まって、野球部のマネージャーから寄付の依頼を受け、辛うじて先輩・後輩の関係を保ってきたと言えます。銀行の役員になってから、大学当局のトップの方々と交友を持つようになりましたが、あらためて東北大学のすばらしさを再認識しているところです。 特に、ノーベル化学賞を2002年に受賞された田中耕一氏の出身大学ということで、日本国中に「研究第一の大学」ということが周知され、知名度も向上したことは、OBとして大変うれしく思います。 さて、東北大学は現在多くの問題を抱え、対応を迫られています。第1に、来年4月に迫った大学そのものの国立大学法人化への対応と法科大学院設置への対応、第2に4年後の平成19年に控えた創立百周年記念事業への対応、第3に、新キャンパス移転問題、その他にも、現下の経済情勢を反映しての産学連携による地域活性化への期待への対応、さらには、地域に開かれた大学に対する期待への対応等々、問題は山積しています。しかし、これら諸問題への大学当局の対応は、それぞれよく検討、実施されているものと、一OBとして思っています。 例えば、青葉山キャンパスに設置された未来科学技術共同研究センター(ニッチェ)を見学した際には、研究第一・実学に強い東北大学の伝統を引き継ぎながら、産学連携を具現化していることに大きな感動を覚えました。大学当局の方々は、しっかりとやるべきことをやっていると確信しています。今回「母校への意見」とのテーマをいただきましたが、賛辞こそすれ、今あらためて「母校への注文」のようなものは特にない、と言うのが偽らざる心境です。 強いて申し上げるならば、大学当局と外部の方々との双方向の情報伝達、意見交流の機会がもっとあってもよいのではないか、ということです。大学から市民や外部に向けての情報は、大学のホームページや本誌『まなびの杜』紙面、その他にも「オープンキャンパス」などがあります。一方、市民など外部から大学に向けた意見は、なかなか寄せる機会が少ないように思います。大学内の組織には、大学の運営に意見を述べる評議員という立場の方々がいますが、多方面の方々から意見を寄せられるような仕組みがあれば、さらに身近な市民の大学、地域に密着した大学となるのではないでしょうか。 |
1932年生まれ |
来年度からの国立大学の「法人化」を控え、出版会の存在意義も大きく変化することでしょう。そのことも視野に入れ、当会は来年度から向こう五年間、若手研究者を対象にした「出版助成」事業を行うことにいたしました。若い研究者の意欲的な作品の応募を期待するところです。詳しくはホームページの案内をご覧ください。 |