「乳酸菌が導く 疾患予防や治療への研究」
東北大学大学院農学研究科
齋藤 忠夫 教授
先生がこれまで研究をなさっていて最も喜び・やりがいを感じたのは、どのようなときでしょうか。
学生と一緒に仮説を立て、それが実験により実証された時です。腸内細菌のヒト腸管への付着性を科学的に検証する方法は、これまでありませんでした。プラズモン共鳴を利用するBIACOREという機器に巡り会い、医学部よりヒト大腸ムチンを頂き、院生と一緒にヒト腸管内にABO式血液型抗原を認識する「血液型乳酸菌」を発見できた時は嬉しかったですね。海外の学会でも認められて招待講演を受けることも、研究者としてはやりがいを感じます。現在は各種の機能性乳酸菌を用いて、ヒトの特定胃腸疾患などの予防や治療に役立てられると考えると、また大きな喜びを感じています。
先生がこれまで研究をなさっていて最も苦労・苦心なさったのは、どのような点でしょうか。
私は以前に、文科系の私立大学に勤務していました。大学からの少ない研究費ではとても足りず、家内に頼んで給料から試薬を買っていました。夏休みなどに、大学構内に私だけが実験をしており、警務員さんから一緒にアルバイトを冗談で薦められたことは今も鮮明に覚えています。理系の実験研究は自宅では出来ません。家族との時間を少しでも取りたいと考えると、睡眠を削るしかありません。「研究と家庭との両立」が、私には一番これまで苦労した点と言えます。研究は好きなことですので、苦労と考えたことはありません。
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「コンピュータ化学 産業革新のための実践的研究」
東北大学未来科学技術共同研究センター
宮本 明 教授
先生がこれまで研究をなさっていて最も喜び・やりがいを感じたのは、どのようなときでしょうか。
学問を社会に生かし、また社会の重要問題を解決する中で新しい学問を育むことを生涯の研究目標としています。30歳頃、当時の最重要課題であった公害問題の解決に触媒の観点から取組みました。その結果、環境触媒という新しい学問の創生に貢献、欧米の著名な大学、研究所にも招かれ、とても高い評価を受けました。その時の喜び、感激が、産業革新のためのコンピュータ化学を世界に先駆けて進める原動力にもなっています。
先生がこれまで研究をなさっていて最も苦労・苦心なさったのは、どのような点でしょうか。
大学における基礎的な学問も社会のニーズと結び付いた時、大きく発展します。ただ、象牙の塔に閉じこもっていては、社会の課題を知ることは出来ません。多様な産学連携研究を推進するとともに、客員教授・准教授として様々な産業分野のリーダーを招聘し、ご指導を受けることにより、社会の重要問題を常に皆が把握できるよう工夫しています。また、世界中から研究者、留学生を集め、日本人との生きた交流も進めています。
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「”脳トレ”ブーム世界へ 脳イメージトレーニングの研究」
東北大学加齢医学研究所
川島 隆太 教授
先生がこれまで研究をなさっていて最も喜び・やりがいを感じたのは、どのようなときでしょうか。
最初の英文原著論文を1993年に出版できた時です。現在では脳機能マッピング研究は、心理学者や言語学者など人文系の研究者が使うほどにポピュラーになりましたが、当時は、測定機器は存在するが、その後に何をどうして良いのかわからない暗中模索の時代でした。そのような中、実験をしてから4年ほどかかりましたが、日本からは初めてとなる脳機能マッピングの論文を出すことができた時は、感慨無量だったことを覚えています。
先生がこれまで研究をなさっていて最も苦労・苦心なさったのは、どのような点でしょうか。
脳科学の研究成果を社会啓蒙する過程で、さまざまな誤解を産んでしまっていることです。一般向けに啓蒙情報の発信をする際に、きちんと理解できるように専門的な情報や複雑な情報はなるべく排除して発信をした結果、それがマスコミのフィルターを通り、より単純化したメッセージに変換され伝わり、結果として、さまざまな誤解を生みだしながら伝達されていたのを知った時にひどく心が痛みました。未だにその対処法がわかりません。
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