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インタビュー

中鉢 良治(ちゅうばち りょうじ)
2006年春発行号(第3号)掲載 ソニー株式会社 取締役 代表執行役 社長 兼 エレクトロニクスCEO 中鉢 良治(ちゅうばち りょうじ)

大学の研究にも「顧客視点」を忘れないでほしい。

現在のお仕事

ソニーは皆さんご存知の通りエレクトロニクスのメーカーですが、他にもゲーム・映画・音楽・金融などをやっています。コアとしてはやはり、エレクトロニクスのメーカーです。私はソニー株式会社の社長であり、エレクトロニクスCEOとしてエレクトロニクス事業を集中的にマネージメントしているという立場にあります。ソニーには東北大学の工学部出身者が大変多く、宮城県の仙台テクノロジーセンターはもとより東京の本社など多くのところで活躍しています。情報処理や電気、材料の専攻だった方が多いようです。私自身は工学部の資源工学科に在学しておりました。学科の改名以前は鉱山工学という名で、戦時下に創立され、鉱山から資源に名が変わり、資源には限りがあるため地球科学となり、現在は環境となっています。そのような変遷がありましたが、資源工学科に入り鉱物処理というものを行いました。ソニーに入社し、その専門をそのまま生かせる領域はありませんでしたが、学生時代に学んだ物理などの基礎知識は大いに役立ちました。

仕事を通し印象に残っていること

博士課程を終了してからなので、1977年にSONYに入社したときは、既に30歳近くでした。当時はベータマックス対VHSのフォーマット戦争の最中でした。それは熾烈な競争を行っていましたが、私の仕事はベータマックスやVHSを越える次世代の高密度磁気記録媒体を開発しようというもので始まりました。結果として77年から85年まで8年間かかり、私のエンジニア時代のほとんどを費やしました。その後は開発のマネージメントとして、金属材料研究所や科学計測研究所で当時検討されていたような材料にまつわる仕事をしていました。

エンジニアとマネージメント

私は材料やコンポーネントのエンジニアリングに携わってきたので、お客様が直接手にされる最終商品の商品企画、全体設計などについては直接関わる機会はありませんでした。しかし、エレクトロニクス商品の競争力はコンポーネントに拠る部分も大きく、最終商品をまとめる部署との繋がりは十分なものがありました。最終商品から見えない部分を見ることができたことは、ソニーという会社全体をマネージメントすることに大いに役立っていると思います。

学生時代の思い出

9年間大学に在籍しましたが、私は地元の出身ということもあって、仙台の街には大学だけでなく高校時代の友人などもたくさんいました。他県出身者よりも、自分の庭のように東北大学や仙台の街で濃密な時間を過ごしていたのではないかと思います。
 クラブ活動は民謡研究会で、先生について日本全国の民謡や三味線・尺八を学んでおりました。ユニークなクラブ活動としてメディアから取材を受けることもありました。メンバーの多くはユニークさを追求していたうように思います。
 民謡というのは素面で謡うものではないですから、仲間とお酒を飲みながら、よく謡いましたね。

東北大学への期待

東北大学で学び、特に東北大学が最も得意とする材料領域で教えていただき、その分野をベースに仕事をしてきたことに対して誇りがあります。母校の現役の研究員の皆さんには、世界的に引けを取らず、是非胸を張って最先端を歩んでいただきたいと思います。
 現在私はソニーの経営に携わっている中で、Customer View Point(顧客視点)という点を繰り返し強調しています。顧客視点に立った取組みというものが事業経営において根本にあるべきだと考えるからです。この考えは一企業のみならず、大学での研究においても必要な視点ではないかと私は思います。
 日本には、大学の成果を待っている企業というたくさんの「顧客」がいます。まず、その人たちが何を求めているかというVoice of Customerを収集する活動が大事でしょう。これが、シーズがうまく活用されない、いわゆる「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」を乗り越えるkeyだと私は思います。
 人によってはCustomerの声を超えたところにこそ基礎研究があるのだという考え方もあるかもしれません。そういう考え方も尊重はしますが、国民全体から預かったリソースを活かすという意味では、損失と言われる場合もあります。そういった観点で、よくバランスをとり研究を進めていただけたらと思います。

東北大学同窓生に一言

企業に入りますといろいろな大学の出身者と仕事をしていくことになります。私は、東北大学の同窓生の組織はあまり活動をしていないのではないかと思います。やはり東京の私学を中心とした同窓会は立派な活動をされています。

東北大学の情報発信の仕方

仙台というロケーションにもよるのだと思いますが、東北大を成長させる、あるいは東北大を知らしめる情報はどこに向かって発信しているのかを定めるべきだと思います。あるときは地域の中でやる、あるときは東京に向かってやる、またあるときは世界に向かってやるということをやっていらっしゃいますが、情報の発信の仕方が非常に分散しているように私は思います。もう少し東北大学の広報活動を戦略的に行う必要があるのではないかと思います。

東北大学を離れ感じること

東北大学を卒業して仕事をさせていただいていますが、振り返ってみると自分の仕事のベースになっているのは大学で学んだことです。しかも歴史のある、今も頑張っているし過去もそうだった大学で学べたという点で、自分の能力はさておいて非常に誇りに感じることが多いです。メディアに名前が出てくるような方々以外にも、私は能力を発揮して活躍されている卒業生をたくさん知っています。私の会社でもそうですし、他の会社でも一生懸命頑張っています。先程、大学同窓会の話をしましたが、東北大学はあまりアピールが得意ではないようです。これでは他の、特に東京を中心とした大学に遅れをとってしまう感じがします。
 みなさん臆せずに勇気を持って戦略的に攻めていってください。お役にたてることがあれば私もお力添えをしたいと思います。





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