地域と大学 学部開講百周年の年にあたって 公開シンポジウム「理学の夢と責任」をめざして

開講記念の意味するところ

 二〇一一年九月、東北大学理学部は「開講百周年」を迎えます。一九〇七(明治四十)年六月、東京大学、京都大学についで三番目の帝国大学として、「東北帝国大学」が、「杜の都」仙台に誕生しました。四年後の一九一一(明治四十四)年一月、数学科、物理学科、化学および地質学科からなる理科大学(理学部の前身ですが、理学部の名称になったのは一九一九年のことです)が開設されました。そして、当時の文部省の通知によりますと、この年の九月十一日が理科大学授業開始の日と記されています。
 二〇一一年九月十一日は、大学創立を記念する「開校」ではなく、授業が開始された「開講」の日からちょうど百年目の大きな「節目の日」に当たります。そこで理学部では、日曜日にあたるこの日に「理学の夢と責任」という内容での公開シンポジウムの開催に向かって準備を行っております。
 なお、最初の講義は、入学宣誓式の翌日の一九一一年九月十二日、林鶴一数学科初代教授が化学科の学生を対象に行った微積分学であったと、高木泉教授(数学専攻)は当時の新聞を丹念に調べて推測しています。

八十周年、九十周年記念講演会

「門戸開放」と「研究第一主義」をまもり続ける理学部

 東北大学を案内する雑誌には、必ず「門戸開放」と「研究第一主義」という文字が登場します。「門戸開放」、「研究第一主義」と言えば、東北大学の代名詞でもあります。理学部(理学研究科)は、これまでの百年間、この言葉を守り抜いてきました。これからもそうであります。
 杜の都のシンボル「青葉山」にある「理学部・自然史標本館前」のバス停を降りると目の前には閉ざされた門などは見当たりません。文字通り「門戸開放」ですが、「門戸開放」の意味は、大学の門戸を広く内外に開き、大学の教育研究資源を社会に還元するとともに、それによって積極的に能力の発掘育成を図るという考え方です。例えば、男子のみの高等学校(旧制)卒業生以外にも初めて受験の機会を与えました。その結果、日本の大学として初めて三名の女子(黒田チカ、丹下ウメ、牧田らく)の入学を許可し、その後活躍されたことは有名です。
 「研究第一主義」とは、第一線の研究を行うことこそが大学人の使命であり、それによってはじめて大学における真の教育も可能になるという考え方です。 理学部はまさしく「知を生みだし、知を受け継ぐ場所」です。この百年間貫き通した「研究第一主義」の精神によって、理学部では創設以来、研究の成果が認められ、文化勲章、学士院賞等の受賞者を数多く輩出しています。

これからの百年イベント「公開シンポジウムの開催」

 理学部・理学研究科は、開講百周年にあたる、二〇一一年度にはいろいろなイベントを計画しております。九月の記念式典では、著名人をお招きして記念講演会を開催します。また、百年間のさまざまな研究成果も公開いたします。そして、「理学とは何か」、「数理とは何か」、「物質とは何か」、「我々の住む地球そして宇宙とは何か」、「生命とは何か」という自然への疑問に対して、市民の皆さま、特にこれから未来に向かって活躍される若い人々と一緒に考え、語り合うことを考えています。
 皆さまのご来場をお待ちしております。会場は、川内萩ホールです(入場無料)。

今泉 俊文(いまいずみ としふみ)

今泉 俊文(いまいずみ としふみ)
1952年生まれ
現職/東北大学大学院
   理学研究科教授(地学専攻)
理学部開講百周年記念事業準備委員
専門/活断層



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