大学(学部)の卒業式が開催されることなしに、後日卒業証書が届けられるという変則的な卒業を経て、一九七〇年(昭和四五年)四月に、念願叶って東北大学大学院教育学研究科(修士課程)に入学した私にとって、二つの忘れがたい鮮烈な思い出があります。
一つは、附属図書館の蔵書数の多いことでした。学部で学んだ新潟大学も旧一期校でしたが、東北大図書館に入っての実感的蔵書数の多さには、心躍る思いがあり、図書館で手に取って歴史的評価の高い本を見つけて読むひと時は至福の極みでした。学部三年の途中から正常な授業が行われなくなるという混乱状態を経たことによる焦りと反省の故か、図書館(教育学部の図書室も含む)で静かに本をさがし、気に入った本を読むことができた幸せな日々を想起すると、今でもタイムスリップした感覚になります。本と図書館の方々にただ感謝あるのみです。
もう一つは、東北大学学生歌「青葉もゆるこのみちのく」の軽快な旋律と歌詞のすばらしさに甚く感動したことです。「青葉もゆる」が正式名称だと迂闊にも思い込んでいましたが、それはさて置き、この歌には、東北大学の学生時代(修士・博士課程)と助手時代(博士課程二年次に助手に採用されて約五年間)は勿論のこと、東北大学を離れてからも、今日に至るまで、数えきれないほどに励まされてきました。どうして、こんなにも励まされるのかと考えてみるに、やはり歌詞に盛り込まれている大きな理想を見据え、使命感をもって前向きに生きようとする学生の姿かなと思います。国内だけでなく、世界の人々(大学生等)に親しんでもらうことのできる出色(しゅっしょく)の学生歌と思われます。文末に実際の曲が聴けるようになっているHPのURLを掲げておきます。
私は、二〇〇九年四月から国立大学法人上越教育大学の学長の職に在りますが、小規模ながら教育(教員養成)系の拠点大学として今後も更なる発展を遂げることができることを願い、他の教職員と知恵を出し合い、可能なものから実践を試みています。簡単に事が運ばないことも間々ありますが、徒に成りゆきを悲観せず、皆で力を合わせて取り組んでいけば、きっと活路は見い出せると前向きに考えるように努めています。それを支えてくれているのが「青葉もゆる」だと言えば、誇張のように思われるかも知れません。でも、心底そう思っています。最後に感謝の意を込め、母校の発展を祈念して、次の歌(オリジナル)を。
青葉もゆるの 歌詞と仲間に
励まされ来ぬ 六十路坂