大学教育の潮流 法学・政治学の「プロ」をめざすあなたへ ― 法学・政治学教育の今

 みなさんの中には、弁護士になって社会で活躍したい、公務員になって世の中の役にたちたいと考えている人がいるかもしれません。大学教育の中で用意されている法学・政治学の「プロ」になる道にはどのようなものがあるでしょうか。東北大学法学部およ及び大学院法学研究科の現在の教育概要を図に示しましたのでご覧ください。
図1 東北大学法学部およ及び大学院法学研究科の現在の教育概要
より高度で専門的な大学院教育の充実
 現在、私たちは、法学部教育に加え、法学部などを経た学生がより高度な専門的知識を習得するための大学院教育(法科大学院・公共政策大学院・研究大学院)の充実に努めています。  法学部の卒業生には、そのまま法政「ジェネラリスト」として社会へ進むだけでなく、大学院に進学して法学・政治学の「プロ」になる道があります。法学部での四年間の教育は、「法政ジェネラリスト」として広く社会で活躍する際に必要とされ、同時に法科大学院・公共政策大学院で高度専門職業人教育を受けるための前提となる基礎的な法学・政治学教育に重点をおいています。
実践力を育てる法科大学院
 法科大学院では、法学部を卒業した入学者(法学既修者)には二年間、他学部を卒業した人や社会人などの入学者(法学未修者)には三年間のカリキュラムを用意しています。一年次には、法学未修者向けの基本的な法律科目が開講され二・三年次には、基幹科目(公法・民事法・刑事法)に加えて、豊富な実務経験を有する実務家教員の指導のもと、法実務の基礎を学ぶための実務基礎科目等も開講され、より実践的な知識や能力の習得を可能としています。
 現在のところ、新司法試験の平成十八年度修了者の合格率が累計で七割を超えているのは全国七十四校中数校しかありませんが、その中に本学が含まれていることは、その教育水準の高さを物語っているといえるでしょう。
プロを養成する公共政策大学院
 公共政策大学院は、公共政策についての高度な専門知識を有する「政策プロフェッショナル」を養成する専門職大学院です。ここでは、二年間で公共政策に関する理論を学ぶと同時に、政策立案のために必要となる実際の作業を体験することにより、理論と実務との統合、理論の実践化と実務の体系化をめざします。中央省庁から派遣されている実務家教員と研究者教員の連携による「ワークショップ」を核としたカリキュラムは高い評価を受け、修了者は、国家公務員やシンクタンクなどのアナリストをはじめとする多様な進路に進んでいます。
法学&政治学の知的先端拠点・研究大学院
 研究大学院(前期二年・後期三年の課程)は、法学・政治学の「知的先端拠点」です。現在の世界は解決困難な問題が次々に発生し、未曾有の変動期に入っています。この変動期に真の解決をもたらし、国際的に活躍できる人材養成を目指して、平成二十年度よりグローバルCOEプログラム「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」が始まりました。その中で、全国で初めて、東北大学と諸外国の大学の双方で英語論文によって博士号を同時に取得する、いわゆるダブル・ディグリー(共同博士学位)課程として、「クロスナショナル・ドクトラル・コース(CNDC)」を設置しました。今後、修了者の国際的な活躍が期待されています。

 私たちは、法学や政治学分野で「ジェネラリスト」の中から「プロ」の優れた専門家や研究者を輩出するために、研究教育環境の一層の充実を図っています。平成二十二年度には、法科大学院・公共政策大学院の研究教育施設を大幅に拡充する片平エクステンション棟が完成します。これら、法学部・大学院法学研究科の最新の動きについては、ウエブサイト(http://www.law.tohoku.ac.jp)で情報発信していますので、どうかそちらもご覧ください。
 
芹澤 英明 芹澤 英明(せりざわ ひであき)
1959年生まれ
東北大学大学院法学研究科 教授
法学研究科長
専門/英米法、トランスナショナル情報法


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