金属結晶の不思議な世界4 ディスプレイ膜の破壊現象
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 ITOとは、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide)化合物のことです。ITOは導電性を持つ上、透明であるという特徴を有しています。そのため、電子で表示を制御する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの電極として利用されている物質であり、また、タッチパネル,フレキシブルディスプレイ、太陽電池などの電極としても使われています。
 ITO電極は、ガラスやPETフィルム(PET:PolyEthylene Terephthalate:ペットボトルの原料)上などに成膜されますが、成膜手法によってアモルファス性もしくは結晶性の導電膜となります。実用的には、電気抵抗の低い結晶性のITO導電膜が主に使用されています。
 例えば、抵抗膜式タッチパネルは、スペーサを介して対向するPET/ITOからなる上部層とITO/ガラスからなる下部層で構成され、指やペンで上部層に触れると上部ITO電極が下部ITO電極に接触してon状態となります。上下電極を透明なITO導電膜で形成しているので、ディスプレイを重ねて表示を見ながら種々の入力が可能です。
 本写真は、抵抗膜式タッチパネルに使用されるITO/PET膜を引張変形した時に生じたITOの亀裂とシワの模様です。PETフィルムの引張方向(写真の左下から右上方向)への伸長及び幅方向への収縮に伴い、ITOでは引張方向に対して垂直に亀裂、平行にシワが寄っているのが分かります。例えば、抵抗膜式タッチパネルやフレキシブルディスプレイでは、ITO電極が曲げ変形を受ける事が想定されますが、写真のように、過度の変形により亀裂やシワが発生し電気抵抗が上昇することにより、デバイスの性能が劣化してしまいます。屈曲、伸縮に強い透明導電膜の作製が実現されるとフレキシブルディスプレイデバイスは更に広く普及すると考えられます。

東北大学大学院工学研究科
准教授 須藤 祐司


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