社会人学生として、東北大学大学院国際文化研究科を修了してから13年の歳月が流れました。私は現在、東北学院榴ヶ岡高等学校の校長をしております。1993年に大学院大学として創設された国際文化研究科の第二期生として、国際地域文化論専攻ヨーロッパ文化論口座に入学を許可され、社会人学生として過ごした2年間は、仕事との両立で時間的に多忙ながらも鍛えられた充実した日々でした。当時、国立大学として、国際文化研究を打ち出したのは東北大学が最初でした。高校では世界史が必修です。世界史は異文化を学び、世界の多様性を「学際的」に研究をし、学術的に整理し、比較検討し、相違をわきまえた上で、共存共生の道を探究する教科です。当時、世界史の教員であった私にとって、願ってもない大学院が設置されたという思いでした。
大学院での学びは、伝統的な学術を基礎に、人間の叡智としての統合力を培うに相応しい内容でした。ヨーロッパ文化論講座ではヨーロッパ文化の伝統的思考を支える学術を各分野のエキスパートである先生方から、親身になって緻密で正確な思考方法を学際的にご教授いただきました。
私は、平田隆一教授から「ローマ市民権」を軸にこれからの国際社会の理解に必要な市民意識を学ぶ土台を作っていただきました。また、学際的実践として他の専攻分野も学ぶことが義務付けられていたことは有意義であったと思っています。多くの留学生を有する東北大学の特性は特筆に値します。おかげで国際交流の必須アイテムの言語力も鍛えられ、文化の多様性を知った院生間の交流は有意義でした。大学院で学ぶことは、研究を深化させるのは当然ですが、学術(学問の作法)を体得することであると思いました。この学術を身につけることが、プロフェッショナルへの道です。
東北大学には開学以来、「ジェネリック・サイエンス(総合科学)」では定評のある学風があります。諸先達が作り上げた粘り強く地道な「学術継続力」こそ、東北大学の誇りであると思っております。
この東北大学の伝統を継承し、二一世紀の国際社会で期待される新たな人材の育成は、国際文化研究科の使命でもあると思います。国際社会で活躍する国際公務員などのアカデミック・スタンダードは修士号です。是非、プロフェッショナルとして、学術研究者だけではなく、国際機関で活躍する後輩が東北大学から数多く輩出することを期待しております。