本学大学院理学研究科の石原照也教授らは、物質中の光の渦状態が電圧として直接検出できることを実証しました。500nmの周期で規則的に孔を開けた厚さ40nmの金の薄膜に円偏光レーザを照射したとき、入射面に垂直な方向に電圧が発生することを見出したものです。この発見により、従来測定方法のなかった電磁場のミクロな回転状態を電圧で測定する手段が得られたことになり、プラズモニクスやメタマテリアルに関する基礎研究の新たな展開が予想されるほか、ナノ光学とエレクトロニクスを結びつける要素技術としても期待されます。 |
本学大学院生命科学研究科生物多様性進化分野の北野潤助教らは、性染色体の変化が日本海で新たな魚の種を形成させたということを発表しました。日本海のイトヨが独自の性染色体を持っているということ、さらに、性染色体の違いが原因で太平洋のイトヨとうまく交配できなかったり、雑種が不妊になったりすることを発見したのです。性染色体が種の起源に重要であるという仮説はこれまでも提唱されていましたが、この研究はこれを日本海のイトヨで実証したものとして高く評価され、9月27日のネイチャー電子版に掲載されました。 |
千葉大学の坂本一之准教授、広島大学の小口多美夫教授と東北大学原子分子材料科学高等研究機構の高橋隆教授を中心とした研究チームは、二次元空間を移動する電子スピンの運動に関する全く新しい概念を世界に先駆け発見しました。高橋教授らの研究結果は、これまで国内外において報告されていない新しい量子効果であるのみでなく、従来のものと比べ、1/1000程度までエネルギー消費を抑え、かつ高速化・多機能化を実現する次世代半導体デバイスとして注目を受けているスピントロニクスデバイスに対して新たな設計指針を示しています。また、この研究成果は、デバイスの環境面に配慮した低エネルギー消費化を実現しながら高速化・多機能化を可能にするための大きな一歩と言えます。 |
本学大学院工学研究科の燈明泰成・准教授の研究グループは、直径1ミクロン以下の金属極細線同士の接触部に電流を付与して発生するジュール熱により、接触部を溶融、凝固し、細線同士を自己完了的に溶接する新しい手法の開発に成功しました。また、一定電流の付与下で自発的に溶接過程が進行する溶接条件を規定するパラメータを提案、実証することで、当該溶接手法の適用範囲を大幅に拡張することに成功。次世代機能性デバイスの創製にはずみをつけるこの研究成果は、米国物理学会Physical Review B誌の2009年10月2日オンライン版で公開されました。 |
本学原子分子材料科学高等研究機構(兼多元物質科学研究所、未来科学技術共同研究センター)の阿尻雅文教授をプロジェクトリーダーとするNEDOナショナルプロジェクト(「超ハイブリッド材料開発」)チームは、高分子と無機ナノ粒子間の界面制御を分子・ナノレベルで行う手法を開発・高分子の成型・加工性と無機材料の高屈折率や高熱伝導性の相反する機能を同時に発現させることに成功しました。この技術は、ハイブリッド材料合成への新たな産業基盤技術でもあり、フレキシブルな反射防止膜、高加工性レンズ材料、LED封し材、光記憶材料などへ応用できます。 |
11月16日NASAのケネディースペースセンターからスペースシャトルを利用して、国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟における宇宙実験を本学大学院生命科学研究科-JAXA(独立行政法人・宇宙航空研究開発機構)の共同で開催しました。今回の宇宙実験では、RNAi(遺伝子の働きを抑えるしくみ)が、宇宙でも有効性を示すかを、実際に調べて明らかにすることが目的です。このRNAiが宇宙で有効に働くのであれば、将来的には宇宙に滞在した人が遺伝子に関わる病気にかかった際に、それを治療する有効な手段にもなるでしょう。結果が待たれています。 |
東北大学国際高等研究教育機構国際高等融合領域研究所、富田浩史准教授、菅野江里子特別研究員らの研究グループは、光を感じることができる緑藻の遺伝子(チャネルロドプシン-2:ChR2)を生まれながらに持つ遺伝子改変ラットを作製することによって、ChR2によって得られる視覚特性を明らかにすることに成功しました。ChR2によって作られる視覚が、ものの形や動きを認知できる機能を提供できる可能性があり、正常な視覚機能と同等であることが示されました。今後は、失明者の視覚を回復させる治療法となるものと予想されます。 |
本学大学院医工学研究科・医学系研究科の阿部高明教授と慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授らの研究グループは共同で、慢性腎臓病の新たな治療ターゲットであるタンパク質OATP-Rを腎臓で発見しました。OATP-Rは体内の尿毒症物質を体外にくみ出すように働き、腎不全時には機能が下がっています。研究グループはこの機能を上昇させる薬が抗高脂血症薬のスタチン類であることを見出し適切に内服することで、臓器障害が改善することを発見。本研究により、腎不全の進行を抑制し透析導入に至るのを遅らせる、新たな治療法が開発されました。 |