大学教育の潮流 教育学部の教育改革 ―「自学」する態度を養うカリキュラム―
教育学部での学び
 教育学部イコール教員養成といったイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、東北大学教育学部は、教員養成というよりも、人間の一生涯にわたるすべての「教育」について学ぶことを目的としています。その中には、学校教育だけでなく、家庭教育、子どもの発達や老いの問題、心の問題や障害をもつ人々の理解と対応などさまざまな問題や課題が含まれます。
 卒業生は、教育行政の現場や社会教育の専門家、児童相談所や青少年の矯正施設の心理の専門職などの立場で、さまざまな分野で活躍しています。また、毎年、3分の1の卒業生は大学院に進学し、修了後は高度専門職業人や大学教員として各々の分野のリーダー的存在として社会に貢献しています。
学部コース再編
 教育学部では、「教育という視点で社会を分析し、教育という観点から新たな社会を創りあげていく人材」の育成を目指しています。それに対応して、2009年度から、従来の5コースを「教育学コース」と「教育心理学コース」の2コースに再編しました。これは、複雑化しつつある現代社会において「幅広い知識」を身につけることをねらった改革です。また、3年生前期からは「演習」「実験」「実習」、後期からは指導教員を中心とする複数教員による指導ユニットの中で学ぶことにより、「深い洞察力」と「企画力・実践力」を身につけることを目標にしています。
「自学」支援プログラム
 教育学部では「自学」支援プログラムによる「思考力」「判断力」「表現力」の育成を目指しています。「自学」というのはあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、自らの学びを通して、自己革新と自己形成を促す学びの過程のことです。しかし、それは自分一人の力で達成できるものではありません。すなわち、「自分自身とのコミュニケーション」と同時に「他人とのコミュニケーション」を通して、作り上げられていくものだと考えられます。
 より具体的には、図1に示されるように、学生の「共同研究プロジェクト支援」(研究を通じた対話)、海外派遣と短期留学生プログラムを中心とした「国際交流支援」(異文化との対話)、自らの学びを深める「自学自習支援」(知識との対話)、支援者としての授業参加を通した「履修・キャリア支援」(教育を通じた対話)の4つの活動を通して、自ら考え、社会に積極的に参加する学生を育成しようとするプログラムです。
図1 「自学」する態度を養うカリキュラム改革の実施
教育者としての成長
 教育学部の授業改革の一つとして、学部生によるSA(スチューデント・アシスタント)としての授業参加があげられます。今までの学部教育では、大学院生がTA(ティーチング・アシスタント)として授業の補助をすることがありました。しかし、今年度の教育学部の一部の授業では、専門基礎科目を中心にTAに加えてSAに授業に参加してもらっています。受講学生は、より身近な先輩であるSAに疑問点を聞きながら学習を進めることもできます。また、SAとなった学部学生自身も教えることを通して、自分の専門をより確かなものしていくことができます。今後は、図2に示されるように、SA(学部生)→TA(主として博士前期課程の大学院生)→シニアTA(博士後期課程の大学院生)といったキャリア・パスを想定しながらの教育者としての成長を促す養成プログラムを確立していきたいと考えています。
図2 学部生によるSAの活用と養成プログラムの確立
 
本郷 一夫 本郷 一夫 (ほんごう かずお)
1955年生まれ
東北大学大学院教育学研究科 教授
専門/発達心理学、社会性発達支援
http://www.sed.tohoku.ac.jp/~hongo/


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