―東北大学の研究環境― 庄司宗生

 私は2006年3月に本学大学院生命科学研究科博士課程後期を修了し、生まれ育った仙台を離れ同年4月より富山化学工業株式会社で新薬の研究開発業務に従事しております。東北大学を卒業してまだ2年しか経っておりませんが、年の経過と共に大学での研究生活が懐かしく思われます。そんな折、恩師の本学生命科学研究科教授佐々木誠先生から本稿の執筆依頼がありました。そこで、私なりに思う本学の良さ、素晴らしさなどを述べさせていただこうと思います。
 先日、新聞を読んでいると日本の大学の研究分野のランキングに関する記事に目が留まりました。どれどれと記事を読み進めると、「やはりありましたね!」、母校が記されてありました。マテリアル分野では言うまでもなく日本のトップであり、総合では国内上位にランクインしておりました。この結果は東北大学の研究第一主義によるものだと思います。この記事を読んで、さて、私が大学院時代に専攻していた有機合成化学の分野はどうだったかと興味が持たれました。
 大学院時代を振り返ってみると、有機合成の分野も負けず劣らず日本、いや世界をあっと言わせる研究が、今と同様に繰り広げられていたと思います。その中でも、私が在学していたころには、理学研究科の平間正博教授のグループによる食中毒の原因毒である非常に複雑な分子の人工的な化学合成が達成され、その論文がサイエンス誌に掲載されるという大きな成果がありました。このような大きな成果は、研究に携わるスタッフ・学生の努力と情熱があってこそのことと思われます。
 このような世界的な研究成果は先生方の優れた指導の他に、東北大学における研究環境が恵まれた活発なものであることによると思います。本学には有機化学という大きな学問の中のそれぞれの分野に世界的に著名な先生方が在籍しており、理系の各学部には必ずいくつかの化学系の研究室があることから学部間での情報交換や人材交流が盛んであると思います。その上、さまざまなシンポジウムや他大学の有名な先生の講演会なども頻繁に催され、地方都市にいながら世界の先端研究を身近に肌で感じることができ、自身の研究が刺激されるアクティブな環境にあると思います。有機化学の分野を例に挙げましたが、他の研究分野もそのような研究を進めていくために有利な環境が揃っていると思います。
 就職先が内定した後輩から、入社まで何をするべきでしょうか、といった質問をよく受けます。そのような問いに私は、このような環境を有効活用し積極的に発言・行動して、自分の研究テーマにとらわれず、研究者としてさらに向上して行って欲しいと答えています。そのように行動することでさらに優秀な人材が育ち、これまで以上に本学がいろいろな研究分野で飛躍することを願っております。
 学部・大学院の卒業年度の学生の方々は研究生活も残りわずかです。研究の息抜きに軽い運動をして気分転換を図って下さい。私も各研究室対抗の球技大会が気分転換になりましたし、生協での打ち上げがさらに明日からの研究生活にメリハリを与えたものだったと懐かしく思います。


INFORMATION in '08 Autumn


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