ノーベル街道と呼ばれている国道41号線を、富山県から南下し岐阜県に入ります。そこは奥飛騨と呼ばれ、四季折々の景色が楽しめる山間の地域です。江戸時代以前からの長い歴史をもつ鉱山町神岡は、銀に始まり銅・亜鉛・鉛などの世界有数の鉱山として栄えましたが、時代と共に縮小し、2001年の採掘停止後は、新しい活路を模索しています。中でも茂住坑は最も良質な鉱石を産出し、付随する集落は、多くのたくましい坑夫で賑わったそうですが、裕福だった当時の面影は廃墟化しつつある歴史的建造物と少なくなった住民の思い出話に残るのみです。
 しかし、近年、その集落を歩き回る顔ぶれが変わってきました。茂住坑を有する池ノ山内部で行われる最先端の地下研究に、世界中から研究者が集まっています。小柴先生にノーベル賞をもたらしたニュートリノ検出器は、東北大学によって再建され、最新鋭の反ニュートリノ観測装置カムランドとして活躍しています。地下の観測装置は、光ファイバーで接続された集落内の詰所から運転されており、研究者とそれを支援して下さる地元住民との笑顔の交流がかつての喧噪を呼び戻しています。

東北大学大学院理学研究科
附属ニュートリノ科学研究センター教授
井上 邦雄

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『まなびの杜』は3月、6月、9月、12月各月月末に発行する予定です。
『まなびの杜』編集委員会委員(五十音順)
伊藤 弘昌 内山 勝 岡野 章一 川名 洋 齋藤 忠夫 
佐藤 伸宏 田邊 いづみ 仁田 新一 堀井 明 山添 康
東北大学広報部広報課 高橋 豊志 横尾 めぐみ 
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編集後記

 東北大学片平キャンパス正門からの道と北門に通じる道とが交差する丁字路の傍らに立つ一基の歌碑をご存知でしょうか。そこには、「みちのおく東北帝国大学の赤まつのみちくろ松の道」という短歌が刻まれています。これは、東北帝国大学法文学部国文学講座初代教授、岡崎義恵の第一歌集『泉聲』所収の一首です。前半部の伸びやかなリズムと後半の抑揚に富んだ軽やかな律動とが調和し響き合う中で、大学に寄せる深い思いを伝えています。東北大学は2007年に創立百周年を迎えます。混迷をきわめる現代において、大学が真に担うべき役割をどう見定めるかが、これからの大学に課せられた重要で困難な課題であることは言うまでもありません。東北大学の草創期を支えた先人の思いを伝える歌碑は、新たな100年の始まりに向かおうとしている東北大学をひっそりと見守り続けているかのようです。『まなびの杜』は東北大学の今をお伝えするだけではなく、皆様から送り届けられる声を受け止める場でもあります。ぜひご意見やご要望をお寄せ下さいますよう、お願いいたします。

『まなびの杜』編集委員会委員  佐藤 伸宏

 


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