ガラス細工シリーズ 1

温度可変デュワー(魔法瓶)

 写真は極低温(マイナス250度)から室温までの任意の温度で物質特有の光やマイクロ波の吸収を測定するための実験用ガラス器具で、デュワーと呼ばれています。どんな波長の光やマイクロ波を吸収するかによって物質の種類や状態が分かります。このデュワーは、七重のガラス管からなり三層の真空部分を銀メッキして使用します。1メートルもの長さのガラス管を最小1ミリ以下の間隔で1日一層ずつ金網を使って組み立て、ガラス旋盤で七時間、炎と格闘して溶接し仕上げます。重さ8kg、ガラス管同士が接触すれば破損します。
 東北大学のガラス工場は大学創設四年後の1911(明治44)年、理科大学化学教室内(現・片平地区)に、日本では大学初のガラス工場として設立されました。以来、常に全国の大学の実験用ガラス機器製作をリードし、日本の技術の高さを世界に知らしめる役割を果たしてきました。中でも注目すべきは、1941(昭和16)年から1955(昭和30)年までガラス技術員養成所を開設し百人に上る技術者を育成したことです。彼らは養成所を卒業後、全国の大学を含むさまざまな職場で新しいガラス器具の開発や後進の育成・指導を行い、ガラス技術の継承と発展に努めました。これらの貴重な歴史の財産は現在のガラス工場に引き継がれております。

東北大学多元物質科学研究所 教授
ガラス・光器械工場 監督 山内 清語

東北大学は2007年に
創立百周年を迎えます
工場ホームページ:
http://www.tagen.tohoku.ac.jp/tech/shisetsu/glass.html
関連図書:「東北大学における理化学ガラス機器の開発」
(日本化学研究会編 東北大学出版会 2005年)