博物館は大学のショーウインドウ
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鈴木 三男=文
text by Mitsuo suzuki |
東北大学に総合学術博物館の組織ができて七年目となりました。この間、東北大学が所蔵する240万点に及ぶ資料・標本類の調査を行い、そして順次データベース化してゆくという地道な作業を進める一方、博物館建設に向けて準備してきました。私たちの博物館は自前の建物が無いため、活動は大きく制限されていますが、そんな中でも@理学部自然史標本館での資料・標本の一般公開、A公開講座と公開講演会、B児童、生徒、市民を対象にした体験学習・体験活動、Cニュースレターの発行、そしてDホームページでの博物館紹介とバーチャルミュージアム、などを行ってきています。スタッフは発足時は博物館活動には全くの素人でしたので、経験を積みながら徐々に活動を拡大してきました。
そんな活動の1つの集成として、2004年2月に仙台市博物館と共同で、「はるかなる憧憬‐チベット」という、私たちにとっては大きな企画展をやりました。これは、「東北大学総合学術博物館のすべて」と銘打っての第一弾として、日本人として初めてチベットを訪れた河口慧海のコレクションを展示したものです。冬の閑散期にもかかわらず会期中の入館者が一万3千人にもなり、予想外の反響ぶりでした。同時に、仙台市博物館、宮城県美術館の講堂などをお借りして、河口慧海、チベットに関連した公開講座を5回行いました。それには河口慧海研究の第一人者である高野山大学の奥山直司先生、作家の夢枕獏さんなどにおいで頂き、こちらの方も定員を大きく上回る盛況でした。さらに展示期間中に、NPO「ゆいもりネット」主催のトークイベント「チベット‐雲の上の暮らし」、NPO法人「地域大学連携機構」による「チベットの現在・未来‐バイマーヤンジンさんが語り・歌う」という二つの関連企画がもたれ、何れもが熱気むんむんの大盛況でした。一連の企画が終わるころには、熱心な市民の方々はすでに「チベット通」になって、さらに貪欲に本や文献を求めるまでになっていたようです。
このように大成功と言って良い一連の活動でしたが、これは実は最初から私たち博物館だけで行ったものではありませんでした。この企画展をやると言うこと自体、上記のNPOのかた達と大学博物館の活動について一緒に考え、行動する中から生まれ、そして企画を具体化し、実行したもので、私たちにとってはこれも非常に大きな経験となりました。とかく、大学が市民に「与える」のが大学の公開だと考えがちですが、そうではなくて、「共に行う」ことこそが「開かれた大学」として発展していくことだと言うことを学ぶことができたわけです。 |
1947年生まれ |