新たな地震発生メカニズムからみる 宮城県沖地震 |
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長谷川
昭=文
text by Akira Hasegawa |
1978年と1936年の宮城県沖地震 1978年6月12日、宮城県沖でM(マグニチュード)7.4の地震が発生しました。この地震により各地で大きな被害を受け、特に仙台市に被害が集中しました。死者は28人、そのうちブロック塀などの倒壊で圧死した人が18人にのぼりました。負傷者は1300人を越え、その多くは屋内で棚などの転倒によるものでした。家屋の被害は仙台市東部から南部の軟弱沖積地盤地域や新たに開発された宅地造成地域に集中し、全壊家屋は千百棟を越えました。電気・ガス・水道・電話などのライフラインも大きな被害を受け、仙台市の都市機能が麻痺しました。 実はこの地震の42年前の1936年に、ほぼ同じ大きさ(M7.5)の地震がほぼ同じ場所で発生しています。しかし、このときは全壊家屋はなく、負傷者は四人だけという、ほんの軽微な被害で済みました。1978年の地震による大きな被害は、近代都市の脆さを浮彫りにするもので、その後、各方面で地震対策を進めるきっかけとなりました。 全国で最も高い発生確率
宮城県沖では、約37年間隔でM7.5程度の地震が繰り返し発生しています。過去の発生履歴に基いて推定した今後10年以内の発生確率は約40パーセントで、日本全国で最も高いのが宮城県沖地震です。 新たな地震発生メカニズム ―アスペリティの繰り返しすべり 最近の研究の進展により、プレート境界地震の発生メカニズムがわかってきました。これには東北大学の研究成果が重要な貢献をしました。すなわち、従来考えられていたようにプレート境界面全体が一様に固着しているのではなく、固着状況が場所によって違っていることがわかってきました。図1に模式的に示すように、プレート境界面上でしっかり固着している領域(アスペリティ)はあらかじめ決まっていて、ずるずるとゆっくりすべる領域(安定すべり域)に囲まれてパッチ状に分布しています。周囲の安定すべり域でゆっくりすべると、アスペリティに応力が加わります。周囲のすべりがさらに進むと、やがて強度の限界に達しアスペリティが急激にすべります。地震の発生です。このようにアスペリティが繰り返しすべることにより、プレートの沈み込みが進行するのです。 GPS(汎地球測位システム)データにより、プレート境界で現在どこが固着しているかもわかるようになってきました。私たちが推定した、一九九七年から五年間の固着状況を図2に示します。宮城県沖地震の震源域では強く固着しているのがわかります。また、過去の発生履歴から、宮城県沖に次いで発生確率が高いと推定された青森県東方沖及び十勝沖でも強く固着していたことがわかります。そのうち十勝沖では、昨年9月26日にM8.0の地震が予測通りに発生しました。 宮城県沖のアスペリティ周辺でも、昨年5月26日M7.0、7月26日M6.2と大きな地震が相次いで発生しています。これらは次の宮城県沖地震の発生に向けて地下で着々と準備が進められていることを示しています。私たちも準備を急がねばなりません。 |
はせがわ あきら 1945年生まれ 現職:東北大学大学院 理学研究科 教授 専門:地震学 |
東北大学附属図書館常設展 | |
●展示内容:和算資料 ●開催期間:7月下旬まで |