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東北大学訪問
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世界最高の称賛
「ノーベル賞」授与
ノーベル賞はアルフレッド・ノーベルの遺言に基づき1901年に創設。物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の六部門で構成されています。今年度のノーベル化学賞の研究テーマは、「生体高分子の固定および構造解析のための手法の開発」です。その対象となる「生体高分子の質量分析法のための穏和な脱着イオン化法の開発」を手がけた田中さんに授賞が決定しました。
タンパク質を詳細に分析できることにより、生命のプロセスをよりよく理解できるとともに、食品検査やガンの早期診断など多くの応用の可能性が報告され、この研究が高い評価を得たのでした。
田中さんは、授賞決定後まもなくの10月30日、母校の東北大学を訪問。多くの教職員、学生に拍手をもって迎えられ、東北大学初のノーベル賞受賞者に心からの賛辞の声が寄せられました。
東北大学名誉博士号の授与
田中さんの業績が学術文化の発展に貢献し、また教育研究へ多大に寄与したことを考慮し、東北大学では田中さんに名誉博士の称号を授与することとなりました。
平成14年10月31日に、遠山敦子文部科学大臣のご臨席の下、学位記授与式が行われ、田中さんは晴れて東北大学名誉博士号を手にされました。
また、東北大学は田中さんへ客員教授に就任されることを要請。田中さんはこれを快く承諾され、東北大学の研究・教育の大きな牽引力となることが期待されます。
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名誉博士記授与
(左:阿部博之前総長 右:遠山大臣)
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田中耕一さんコメント
実学を大切にする研究風土・東北大学
私は1983年に東北大学電気工学科を卒業後、株式会社島津製作所へ入社、中央研究所で仕事を始めました。駆け出しの一電気技術者だった私は、数人のグループとともに質量分析装置の開発に従事したのです。87年に偶然のきっかけで「生体高分子の質量分析を可能にする方法」を見いだすことができたのですが、まさかこれがノーベル賞授賞対象になるとは、自分でも信じられない驚きであり、この上ない喜びです。これも、上司やグループの皆さんのご協力のおかげであると感謝にたえません。
東北大学は、本多光太郎先生、八木秀次先生、西澤潤一先生など、多くの実学の研究者を輩出しています。その自由で、実学に役立つ研究を大切にする学風を学んだことが、私の研究を後押ししてくれたものと思っています。
私は、自分が化学者だとは考えていません。一人のエンジニアだと考えています。今後とも、この領域の研究・開発に励むとともに、会社と大学などの外部研究機関との橋渡し的な立場で、広い意味でのバイオエンジニアリングの発展に貢献できればいいと考えています。
(受賞決定後の安達三郎名誉教授との談話より抜粋)
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