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シンポジウムにおける基調講演
←原ひろ子氏(放送大学教授、お茶の水女子大学名誉教授) |
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(日本女子大学理学部教授) |
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私たちの周囲にはさまざまな性別による役割分担があり、知らず知らずのうちにその環境に慣らされています。確かに妊娠や出産は女性にしかできないことですし、男性の方が高い筋力を持っていることは事実です。このような差異は「生物学的な性(セックス)」に基づくものです。ところが、育児についてはどうでしょうか?最近では授乳やおしめの交換に参加する男性も増えてきているようですが、保育園に通う子供が熱を出したときに、仕事を早退して迎えに行くのは母親の方が多いでしょう。お年寄りの介護に関しても、女性の負担の方が圧倒的に大きいようです。つまり「女性は家庭を守り男性は外で働く」という構図が出来上がっていますが、これはまさに「社会的な性(ジェンダー)」による役割分担を表しています。
このようなジェンダーによる役割分担や差別をなくしていこうという動きが、国や地方自治体で盛んになってきています。これが「男女共同参画」推進運動です。よく混同されがちなのですが、男女共同参画は、いわゆる女性の地位向上というフェミニズムとは違います。女性も男性も共同して住みやすい社会を作っていこうというのがめざす理念です。仕事中心の競争社会の中でもまれて「男は辛いよ」と愚痴をこぼすのであれば、じゃあ、女性もその辛さを一緒に背負って行きましょう、そうして家庭の団欒にもっと参加する時間を増やしたら、ストレスが減って楽しくなるのではないですか?そのために女性も働きやすい環境を整えましょう、男性も育児休暇や介護休暇を取りやすい雰囲気を作っていきましょう・・・このような実践をしていくことが、男女共同参画の活動となっています。
大学は教育と研究を行う場であり、教育も研究も本来なら性別には関係ないはずです。しかしながら、現実にはそうではありません。例えばいわゆる理工系の学部では、女子学生の数は非常に少ないものとなっています。これは、女性の生理的な志向性ということもあるでしょうが、ジェンダーによる役割分担の考え方が背景としてあり、また彼女たちにいわゆるロールプレイモデル(お手本となるような人)がいない結果でもあります。逆に文系の学部では女子学生の割合は理工系よりも大きいのですが、それでも女性教官は多くありません。実は東北大学は、大正2年(1913年)に帝国大学として初めて三人の女性(黒田ちか、丹下うめ、牧田らく)を学生として受け入れました。これは沢柳政太郎初代総長が、「高等学校(旧制)卒業と同等の資格を持っていれば受け入れる」という門戸開放主義を謳ったことに基づいています。しかし現在は、講師以上の女性教官の比率は平成14年6月時点で約3.5%に留まっており、職位が高くなるほどにその比率が下がっています。また長く女性が少ない環境であったために、更衣室などの女性専用の設備がまだ十分とはいえません。
こういった東北大学の現状を改善するために、平成13年度から「東北大学男女共同参画委員会」が発足し、さまざまな活動を行っています。その一環として、2002年9月28日(土)に「第1回東北大学男女共同参画シンポジウム―学問・教育と男女共同参画―」を仙台国際センター大ホールで開催しました。当日の参加人数は約470名であり、東北大学の教職員や学生だけでなく、一般市民の方々や、内閣府、他大学、地方自治体などからも多くの参加者を得ました。翌日の朝日新聞朝刊(宮城版)では、「今、再び先駆けへ」という見出しで、シンポジウムの内容が取り上げられました。私たちの取り組みが実際に大学における男女共同参画推進の「先駆け」になることを願って、今後とも、調査・広報活動、育児・介護との両立支援や相談窓口の開設など、両性がともに輝ける大学をめざした取り組みをしていく予定です。市民の皆様からのご意見などがありましたら、ぜひ下記までお寄せ下さい。
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東北大学の教職員によるパネルディスカッションの風景 |
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