片平キャンパス内には、本学創立以前にさかのぼる明治建築がいくつか遺されています。中でも「魯迅の階段教室」として親しまれているこの建物は、仙台医学専門学校の講義室として一九〇四年に建てられたものです。
 近代中国の精神的支柱とも称される偉大な文学者・魯迅。彼が医学を志し仙台医学専門学校に留学したのも、同じ一九〇四年のことでした。のちに彼はその自伝的小説の中で、留学中に授業で見た日露戦争の幻灯写真に映る、無力感に満ちた中国人の姿が、医学から文学への転向を決意するきっかけであったと書き記しています。
 彼が留学していた頃、この教室では当時まだ珍しい幻灯機を使った授業がしばしば行われていました。文学者・魯迅の心中には、この教室の光景が、敬愛する「藤野先生」の面影とともに、仙台時代の記憶として深く刻まれていたのではないでしょうか。
 その後の改修・移築を経ながらも、教室は今もなお往時の姿を私たちに伝えています。そして最近は、多数の人々が中国からここを訪れ、思い思いの言葉を古びた黒板に書き記しています。階段教室は、国境を越えた歴史遺産として、新たな脚光を浴びています。

東北大学史料館研究員 永田英明

 

魯迅が学んだ学級階段

 

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『まなびの杜』は3月、6月、9月、12月各月月末に発行する予定です。
『まなびの杜』編集委員会委員(五十音順)
伊藤 弘昌 榎本 武美 大隅 典子 大滝 精一
岡野 章一  行場 次朗 齋藤 忠夫
田邊 いづみ  仁田 新一  渡邊 忠雄
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編集後記

 仙台に来て4回目の冬を無事に越えることができました。長年過ごした東京よりも緯度が高いために、季節ごとに太陽の高さが大きく変化することに最初は随分と驚きました。これから春に向かって陽射しが暖かさを増していくことが、とても嬉しく思える毎日です。
  そろそろ野菜も山菜も春独特のものが出回り始める頃でしょうか。見たことも聞いたこともなかった材料を使ってお浸しや煮物を作るのは、初めての実験をするような楽しみがあります。ファーストフードや外食産業が隆盛を極め、簡単に食べるものを手に入れられるようになった時代だからこそ、あえて手間のかかる料理に挑戦することが心の贅沢だと思えます。

 DNAの構造が明らかになって60年経ち、生物学の実験でも特に遺伝子を扱う分野はかなりのものが「キット」となりました。もちろん、お金はかかりますが、カタログを見てオーダーすれば、誰でもほとんど同じような実験を手軽に行うことが可能です。でも、本当に新しい発見をめざすには、出来合いのものにばかり頼っていてはいけません。不可能を可能にするためには、忍耐力と閃きが必要です。…という訳で、学生の皆さんには「スローフードの奨め」を説いているのですが、その効果や如何?

『まなびの杜』編集委員会委員 大隅 典子


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