世界に通用する人材の育成を


村田 稔=文
text by Minoru Murata

百年の大計は教育にあり
 21世紀の日本を担う世代が熱中しているハイテクゲームは、 果たして彼らの夢と創造性を育んでくれるのだろうか。科学技術の進展や国際化に向けて、 新しい時代に生きる日本の若者をどのように育成し、そのために何をすべきか真剣に議論する必要があるのに、 私たちは教育というと、教育基本法の見直しやら制度論ばかりに終始していないだろうか。
 教育には家庭教育・学校教育・社会教育などがあるが、 今はそれぞれの役割が非常にあいまいになっていることが問題の本質ではないかと思う。 人格が形成される過程で、道徳や人間観、人生観などを教えていかねばならないのに、 親も学校もあまりにも画一的な教育を子供たちに押しつけてしまった。教育改革には、 大人たちと社会全体の意識改革も必要なのではないか。百年の大計は教育にあり。大胆な改革を進め、 国際社会の第一線で活躍できる人材を養成していかなければ、日本の行く末は危うい。
考えさせる教育を
 資源のない日本が持続的に発展するには、「科学技術創造立国」の道しかない。 日本の将来は、分数や小数ができない大学生ばかりでは大変なことになる。「ゆとりの教育」が、 授業の内容や時間を大幅に削り単に公式を覚えるだけとなったら、結果として科学や数学に興味を もつ子供たちがどんどん少なくなってしまい大問題である。
 生徒自らが学び、考え、課題解決する力を育むには「考えさせる教育」こそが大事である。 知的好奇心をもった子供たちが、自分の進路とかあるいはエネルギー・環境問題などの将来課題に 対して自ら考え判断し行動できるようになると、日本の未来は明るい。

モノづくりのための人づくり
 3年前、東北大学金属材料研究所の一般公開で見学に訪れた小・中学生を対象に、 「未来博士号」を授与するとの記事を読んだ。将来的なモノづくりへの危機感から、 金属材料研究所の若手研究者らが中心となって研究室のスタンプ・ラリーを企画し、 大学院生がガイド役となって各研究室が工夫を凝らして実験・説明を行ったそうだ。 「これって何?何故?」と好奇心旺盛な小・中学生の未来博士は、どんな子供たちだったのだろうか。 こうしたオープンキャンパスへの取り組みは今後も続けてほしい。
 東北大学では、今春から「創造工学センター」が始動した。ここでは、技官や院生らの指導で、 学生自らのアイデアを基にモノづくりを実践し学び取れるカリキュラムが工夫されている。 モノづくりはまさに人づくりである。こうした大学の教育環境整備はすばらしい試みである。 「杜の都」のシンボルとも言える東北大学が、世界に通用する科学研究と教育の拠点として、 人材育成に今後も先導的な役割を果たしてほしいと願っている。

むらた みのる
1946 年生まれ
東北大学工学部卒
現 職:新日本製鐵株式会社
技 術総括部 部長
専 門:エネルギー技術




I N F O R M A T I O N

公開市民講座
自然史講座
「スコラボタニカ」

  第4回 7月20日(金:海の日) 10:30〜12:00
 「サンゴ礁を創る生物とサンゴ礁を壊す生物たち」
    理学研究科教授 西平 守孝
第5回 9月16 日(日)10:30〜12:00
 「ケナフは地球を救えるか?」
    理学研究科附属植物園助手 内藤 俊彦
●定員 各60名
●受講料 無料(ただし、入園料220 円必要)
●会場・問合せ先:理学研究科附属植物園
 (tel022- 217- 6760 )
 http://www.biology.tohoku.ac.jp/garden/


大学等地域開放特別事業

 

1.『地球探偵団:大地のタイムカプセルをさがせ』
8月4日(土),18 日(土)
● 対象:小中学生 ●募集人員:各30 名
● 会場:総合学術博物館
● 問合せ先:総合学術博物館(tel022- 217- 6767 )
http://www.museum.tohoku.ac.jp/

2.『みてみよう「いのちの始まり」貝の受精と発生を観察する』
7月23日(月)・7月24 日(火)
● 対象:宮城県内の中学生 ●募集人員:20名
● 会場、宿泊施設:農学研究科附属海洋生物資源教育研究センター
● 問合せ先:農学研究科附属海洋生物資源教育研究センター
(住所:宮城県牡鹿郡女川町小乗浜 tel0225-53-36)