−化石シリーズ 第4回−
「恐竜の卵」


 化石は古生物学者の研究対象だけでなく、一般の人々にとっても興味のつきないものとなっています。とりわけ恐竜は子供達に人気があり、その巨大な骨格は博物館の展示の中でも、他を圧倒しています。
 恐竜の化石は、普通、恐竜自体の骨で代表されますが、その卵も化石として保存されることがあります。上の写真は、中国内モンゴルの白亜紀後期の地層(約8千万年前)から産出した恐竜の卵です。円形の巣に硬い殻をもった長楕円形の卵が放射状に並んでいます。1個の卵の長径は15cm、最大幅6.5cmで、全体で19個が確認できます。隠れて見えない卵もあり、おそらく産卵の時はもっと多くの卵を産んだものと推定されます。卵は砂岩の中にあることから、生きている時、砂の中に産卵したことが分ります。
 この卵を産んだのは角竜類プロトケラトプス科の恐竜だったと考えられています。どうして恐竜の卵が化石になりえたかは謎ですが、おそらく産卵直後に気温などの環境が激変して孵化することができず、そのまま化石として残ったものと推測されます。この標本は、理学部自然史標本館に展示されています。
(総合学術博物館長 森  啓)