「東北大学創立50周年記念式典」
いまから半世紀前の昭和32年6月22日、東北大学の創立50周年を祝う式典が片平キャンパスで行われました。今回は、史料館に保存されているこの記念式典の記録フィルムをご紹介します。
式典の会場は片平地区の中央体育館。当時県下最大規模の体育館として、国民体育大会の会場などとしても使われていたこの施設に来賓と職員学生代表あわせて約2000人が参加して行われた半世紀前の祝典について、フィルムには式典前の来賓控室の様子から式典終了後の祝賀会に至るまでの一切が記録されていました。
式辞の中で、当時の高橋里美学長は、東北大学の発展の原動力となった伝統的精神を「研究第一主義」という言葉で総括し、これらを継承していくことが新制東北大学の使命であると宣言しています。よく知られるように本学初代総長の沢柳政太郎は第一回の入学式で大学の本質的使命が学術研究にあることを強調し、以後研究活動を重んじることが戦前期から本学の学風とされてきました。しかしこの学風の表現として「研究第一主義」の語を総長式辞等の中で使い始めたのは、新制東北大学最初の学長となった哲学者・高橋里美です。それは、単なる伝統の強調というだけではなく、戦後の学制改革や社会変動の中での大学や学生のあり方が激しく揺れ動くなか、新制東北大学が進むべき方向性を改めて指し示すもの、という意味を込めたメッセージでした。「研究第一主義」は、新制東北大学の出発に際し、半世紀の歴史のなかから引継ぎ発展させるべき精神を示す言葉として使われ、定着していったのです。
さて、フィルムでは学長式辞の後、文部大臣や当時東大総長であった矢内原忠雄、初期の卒業生でこの直後に東大の総長となる茅誠司(日本学術会議会長)といった人々による来賓祝辞があり、さらにやはり本学草創期からのメンバーである熊谷岱蔵元総長が特別功労者として挨拶をしています。瀧川幸辰京大総長による万歳三唱のあとは、当時の中央講堂(のちの公孫樹食堂。現在のさくらホール南方付近)で行われた祝賀会に場面が変わりますが、ここでも日本初の女子学生・黒田チカ(当時お茶の水女子大名誉教授)など卒業生や関係者のスピーチがありました。映像の最後には、会場から出てくる参加者の背景に、当時の片平キャンパスの風景が映し出されています。
さらに半世紀後の今年、本学は創立百周年を迎えます。この百周年の祝典では、次の五十年に対する展望がどのような形で提示されるのでしょうか?
資料提供 東北大学史料館
(解説:永田英明 東北大学学術資源研究公開センター史料館)
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