東北大学附属図書館狩野文庫蔵『大塔物語』 表紙の写真にも、「」(ドンブト) 「辷」(タフシ)「」(コロボシ)「」(ハギ) 「」(ハヒ)「 凸 」(ナカタカキ)「 凹 」(ナカクボキ)「由良々々」(ユラユラト)「飛良々々」(ヒラヒラト) 「 頡 」(ヲドリコヘ)「 頑 」(ハネコヘ)などといった特徴ある言葉が見られます。『大塔物語』には、他にも「真深茂」(マツシグラニ)「驫々」(ヒウヒウト)「 」(ザンブト)「」(ヤツシ)「惟谷」(ココニキハマル)等 々の言葉も現れますが、いずれも室町時代のリテラシーに深く溶け込んでいたものです。こうした一見不思議な言葉に、真名をめぐるリテラシーの豊かな伝統と、往時の学びの場の叡智や熱意、技術がよく現れています。『大塔物語』は、そうした言葉を用いて、応永七年(一四〇〇)に信濃国(今の長野県)で起こった信州大塔合戦という戦いの経緯を切実な思いをこめて記し、後世に伝えようとしたのです。ここにも、言葉の力、学問の力がたくましく息づいています。 |
東北大学文学研究科教授 |
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