歴史科学専攻と高度学芸員養成文学研究科は、豊富な歴史資源を有しており、古文書、遺跡・遺物、絵画・彫刻などの、実物と広範な調査資料から成っています。本GPでは、これらの蓄積を活用する教育によって、歴史学各分野における専門的資質を高度に育成し、特に分野横断的な視野を持つ世界水準の学芸員を体系的に養成することに重点を置いています。大学院生を、それぞれの専攻分野の原資料に堅実に取り組ませ、正統的な「原典主義」を学ばせることを重視します。美術作品、考古資料などの「モノ資料」を研究対象とする分野を中心に学ぶ「キュレイター養成コース」と、文献史料を研究対象とする分野を中心に学ぶ「アーキビスト養成コース」を設置し、学際性も養います。前者は美術館や博物館、文化財センターなどで、後者は公文書館や博物館、史料館などで活躍する専門家を養成します。 「技」(わざ)の継承と院生プロジェクト 歴史資源は分野によって、独自の特色を多く持っています。本GPでは各専攻分野の伝統を基盤に、それぞれの対象を取り扱って分析を深める「技」を系統的に伝えていくことを重視しています。授業では実習、演習が重要であり、それらの授業を補佐しながら学ぶTA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)として、大学院生を多数採用しています。また、院生を対象に学内公募し、各自の歴史資源研究を支援する「院生プロジェクト」事業を実施しています。これまでに四十一件を支援しました。イタリアでの美術作品研究、ローマ時代の遺跡発掘、ドイツ・アメリカ・中国での文献調査など、多くの院生が海外調査に出かけています。国内でも非常に多くの場所に派遣支援し、原史料や美術作品に実地に取り組んで詳細な研究を進めています。 歴史資源の社会的公開と大学院教育このGP事業の基盤である文学研究科の歴史資源は、創立百周年記念展示「東北大学の至宝―資料が語る一世紀」でも注目されました。たとえば図2の縄文時代資料は、国指定重要文化財です。本GPでは、青葉山キャンパスにある自然史標本館の展示制作にも参画しました。大学院生が研究室で直接に取り組む歴史資源のデータベース化と、生涯教育に資する社会的公開とは、深く関連しています。特に考古資料について、全国の博物館企画展などへ積極的公開を進めています。平成十年に東北大学総合学術博物館が設置されてから、各分野での学術資源の保存・公開の準備が進められています。東北大学が長い歴史の中で培ってきた貴重な資料を広く市民の皆さんに公開し、大学院教育に活用するためにも、新博物館建設計画に期待します。 |
阿子島 香(あこしま かおる) |