市民のためのベンチャー講座5〈最終回〉

企業家ネットワークをつくる

大 滝 精 一=文
text by Seiichi Otaki

おおたき せいいち
1952年生まれ
東北大学経済学部教授
専門:経営政策
   経営組織
   研究開発管理



 これまで4回にわたる講座の中で、そもそも会社とは何か、それをどのようにつくるのか、会社をうまく軌道に乗せるためにはどこに着目したらよいのか、といったことについて述べてきました。今回は講座の最終回として、企業家ネットワークの重要さについてお話したいと思います。
 すでに述べたように、会社を設立しそれを軌道に乗せていくためには、(1)誰を顧客とし、(2)その顧客にどんな満足を、(3)どういった方法で提供するのかを、常に考え続けていかなければなりません。また、こうした事業を健全に進めていくためには、ヒト、モノ、カネ、それに情報や知識といった、さまざまな経営資源をつくり出したり、調達していくことが不可欠です。しっかりとした事業の構想と、それを実現させる経営資源の裏づけがあって、初めて会社は順調に動き出します。これらのことは、皆さん自身が考え実践するものであって、誰か他の人が代わってやってくれるわけではありません。
 しかし、たとえ皆さんがたった一人で事業を始める場合であっても、そこにさまざまな人々の協力が必要なことも事実です。資金の調達に際しては、金融機関はもちろんのこと、同僚や個人投資家(エンジェル)からの支援も欠かせません。顧客や取引先との関係が重要なことはいうまでもありません。また、最近では、通産省や県・市町村、大学などの公的機関も、いろいろな形で支援の手をさしのべています。困ったときに相談にのってくれる支援者やアドバイザーも、孤独になりやすい企業家になくてはならない存在です。

有効なネットワークを構築し、
緻密な計画と自己の機動力で
道を切り開く。
 最近の成功した企業家をみていると、彼(彼女)らはネットワークをつくる達人のように思われます。さまざまな専門能力や知恵を融合することで会社が成り立つ今の世の中では、かってのような一匹狼的な人は、企業家として必ずしも成功しません。外部のいろいろな人々から協力や支援を上手に引き出してくる能力が、現代の企業家には不可欠なものといえます。
 しかし、外部の人々から支援を得るためには、企業家の自身の魅力としっかりとした事業計画が前提となります。「外部に頼る」のではなく、自らを鍛えることで人々をひきつけることが必要なのです。会社の独自能力が何かを徹底的に考え抜き、それに合致したネットワークを着実に築いていくことが、会社をつくり繁栄させていくカギとなるのです。




東北大学出版会だより4



 戦前・戦後の青年たちの必読書『三太郎の日記』などで著名な阿部次郎先生は、東北帝国大学を代表する教授のお一人で、思想史や哲学・美学、日本文化史の研究に大きな足跡を残されました。先生の三女大平千枝子さん(文学部美学科卒、仙台市在住)はエッセイストとして活躍されています。1961年の日本エッセイストクラブ賞に輝いた幻の名著『父 阿部次郎』が、東北大学出版会叢書の3点目として、このたび増補復刊されることになりました。
 娘の視点から、父の『語り部』として、主に家庭人としての、とくに敗戦直後の時代を背景に最晩年の阿部先生を描いたものです。家庭内でも理想主義を貫徹しようとする精神的にも肉体的にも強い父の姿。その父の老いとのあらがい。日々勝る死の影。衰微していく肉体と精神。阿部先生とそのご家族が、老いと死をどのように受け入れていったのか。愛惜のまなざしと透徹した観察力と筆力によって紡ぎ出します。


大平千枝子著
『父 阿部次郎』
(本体価格2,200円、1998年12月刊)


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