金属結晶の不思議な世界3 電子顕微鏡で見る磁性体の内部構造
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 東北大学では、新しい情報記録システム、温暖化ガスを使わない冷凍技術、磁場で高速に作動する形状記憶合金などの次世代テクノロジー開発のために、さまざまな磁性材料を研究しています。
磁性材料は、自らを安定化させるために「磁区」と呼ばれる小さな断片に分かれた内部構造を持ちます。磁区は、磁性材料の開発ではとても重要な研究対象で、細菌やウイルスなみに小さい場合もあります。このような小さい構造体を調べるために、私たちは電子顕微鏡を利用します。
 図はニッケル、マンガン、インジウム等を含む新型の磁性形状記憶合金(1)の電子顕微鏡写真です。右上の灰色部分は、白線・黒線で区切られた矩形状の磁区①から⑩に分割されています。さらに、ホログラフィーという特殊な電子顕微鏡技術で緑の枠線内を調べると、挿入図が示すように、この部分の「磁力線」を可視化することができます。(2)画用紙の上にばらまいた砂鉄に棒磁石を近づけると、砂鉄は棒磁石のN極とS極をつなぐ磁力線に沿って並びます。電子顕微鏡を使えば、そのような磁力線をミクロやナノの領域で観察することができます。なお、写真左下の黒っぽい部分は磁石の性質を示さない部分で、ここには磁区はありません。
この合金では、磁石の性質がある部分とない部分の体積比を、外から加える熱や磁力で操作することができます。このような性質が形状記憶の機能をもたらす要因となります。

東北大学多元物質科学研究所
准教授 村上 恭和


1) Kainuma, 等 Nature 439(2006) 957 2) Murakami, Shindo, 等 Nature 423(2003) 965

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