まなびの杜45号
東北大学大学院薬学研究科  附属薬用植物園シリーズ3
トリカブト
 トリカブトは日本で野生する有毒植物として有名です。花の形が雅楽の装束に似ているため、あるいは鶏冠(とさか)に似ているために、その名がついたと言われています。トリカブトといえばアイヌが狩に使った矢毒がすぐに思い出されます。
   花がついているときにはトリカブトを見間違うことはありませんが、芽吹きの頃にはニリンソウ、ヨモギ、セリ、ゲンノショウコと似ているために、毎年各地で山菜と間違えた中毒事故が起きています。
 トリカブトの根は附子(ぶし)と呼ばれ、そのままでは猛毒です。しかし、適当な調製を施した加工附子を虚弱体質の人や病気で弱った人に使うと、鎮痛、冷えの解消、新陳代謝の改善になります。トリカブトは、加工処理によって毒から薬へと劇的に変化する興味深い植物です。
 余談ですが、「東海道四谷怪談」でお岩が飲まされた毒は附子とされています。
東北大学大学院薬学研究科 大島 吉輝
 


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