鮑(アワビ)は古来より高貴な生き物であり、食べ物でした。奈良時代、皇族のお姫様が志摩の国を訪れたときに食べた「鮑」の美味しさに感動、土地の神社に供えるよう命じたとか。その神社が伊勢神宮。鳥羽市国崎町では今でも古式にならい熨斗鮑(のしあわび)を奉納しているそうです。また、熨斗鮑は不老長寿の妙薬とされることから、贈る人のこころを伝える意味を込めて贈り物に「のし」をつけるようになったそうです。
「磯の鮑の片想い」―これは万葉集「伊勢の海人朝な夕なに潜つぐ鮑の片想いにして」からきています。鮑の殻をよく見て下さい。渦を巻いた耳の形をしています。鮑はミミガイ科の巻き貝であり、貝殻は1枚です。一見、2枚貝の片方だけがついているように見えることから、自分が想っているだけで応える相手が居ないということで、片想いを鮑で表現したわけです。
日本ではエゾアワビの人工種苗生産技術を世界に先駆けて開発し、今では人工種苗を生産し沿岸域に放流して、天然資源を守りながら生産を行っているのです。ちなみに、天然資源の少ない中国や韓国では、陸上施設での鮑養殖が盛んになっています。
私たちの研究室はエゾアワビの資源保全と同時に日本ブランドの養殖品種を造るべく、交配実験と飼育実験に日夜取り組んでいます。
(農学研究科附属複合生態フィールド
教育研究センター 木島 明博)
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