[研究室からの手紙] | |
障害領域の相談データベース「ほっとママ」の実験報告 |
「ほっとママ」開発の背景 | ||||||
日本の教育現場では、様々な問題が山積されています。例えば不登校児・障害児等の本人はもとより養育者や専門家に対する支援が未だ不十分です。特に都市部から離れた遠隔地や海外在住の日本人には情報が少なく、他方都市部では、情報が多く、どの情報を利用したらよいのか迷ったり、混乱している場合も多いのです。このような現状の中で、大学がネットワーク、特にインターネットを利用し、高い専門性と信頼性のある情報提供と相談を行うことは有意義ではないかと考えました。その結果この「ほっとママ」システムを開発し、一昨年1年間実験し、その後インターネット上では昨年まで実験を継続しました。実験開始時には、新聞テレビ等で報道されましたが、実験が終了した現時点で、市民の皆さまに最終報告をさせていただきたいと思います。 | ||||||
「ほっとママ」システムの構成と結果 | ||||||
「ほっとママ」システムは、不登校児・障害児に対する支援を4つのレベルに分けました。レベル1では、「専門的知識データベース」で全国の専門家16名で構成されています。レベル2は、「コンピュータによる相談」、レベル3は、「テレビ電話相談」、レベル4は、実際の対面による「面接相談」を用意しました。レベル1から3を提供する専用の「ブース」を仙台市内の公共施設に設置して高速回線で東北大学大学院教育学研究科の我々の研究室と結び、レベル1と2は、インターネットからも利用可能にしました。 専門知識データベース(レベル1)は、16の専門領域における一般的な疑問に答えるため、各領域毎に「質問と回答」30個、計480個用意しました。詳しく知りたいユーザーのために詳しい解説もつけ、専門家の声と顔の動画も提供しました。全国の16人の専門家のデータベースは、大変利用度が高く、我々も驚くほどでした。アクセスの回数を頁で整理しますと9カ月で30万件、1年8カ月の実験終了時では90万件を越えるほどでした。
コンピュータによる相談(レベル2)は、専門家の知識や相談技術をモデルにそれを「コンピュータによる相談」に置き換えたものです。今回は私の研究成果である「ことばの遅れの評価と指導」の領域のみを準備しました。歌遊び「げんこつ山のたぬきさん」を3次元画像にし、それを見ながら親と子どもが一緒に行ってもらい、どれほど正確にできるかによって5段階に評価し、それぞれの段階でアドバイスを用意してあります。これはコンピュータ利用による発達診断の研究的試みです。これも「歌遊び」を用いた言葉の発達診断という独創的な研究成果を用いたこともあって、大変関心が高く、このようなものを沢山用意して欲しいという意見が聞かれました。ブロードバンド(回線が太くなって沢山の画像情報も送れる)時代には、さらにこのような診断方法が開発されるでしょう。
テレビ電話相談(レベル3)は、テレビ会議システムを用いたました。予約して専門家と相談するものです。これも家から相談できるようになって欲しい。携帯電話でできるともっとよい等の意見がありました。 以上の以上のレベルで十分でない方は、実際に専門家と対面して相談する事になります。 この実験は、大変な好評をいただきました。さらに良いものを作って欲しいという要望がママさん達からありました。外国にいる日本人からの応答もあり、インターネットの威力に我々研究チーム(東北大学・三菱総合研究所・仙台応用情報学研究財団)も元気づけられました。これからの21世紀には、このようにネットを利用した相談や教育システムの開発が進むと思います。15世紀の活字印刷技術の発明によって人間の教育が大きく変わりましたが、21世紀はIT(情報技術)の発展で教育も大きく変わることが予想されています。市民の皆様、「ほっとママ」の実験にご協力をいただき感謝申し上げます。 |
1942年生まれ |