吉田正志(法学部教授)
「中善」―1961年3月に退官された民法学の泰斗・中川善之助法学部教授を、学生たちは親しみをこめてこう呼んだ。川内記念講堂と図書館・文系四学部の間を南北に貫く道路にある「中善並木」は、春ともなれば見事な花が咲き誇る桜並木だが、これは中川教授と学生たちとの深い、親しい交流の記念である。
大学祭に焼鳥屋を出す企画を立てた学生たちがいた。 ところが、焼鳥屋は大学祭にふさわしくないとして実行委員会の許可が出なかった。困り果てた学生たちが、中川教授なら自分たちの気持ちを理解してくれるに違いないと信じて頼みこんだところ、快く“焼鳥屋のおやじ”になることを承知してくれた。これで出店の許可もおりた。この焼鳥屋の収益で、学生たちは苗木を植えた。――これが「中善並木」のいわれであると、かつて林屋礼二名誉教授からご教示を受けたことがあった。
中川教授は、並木に自分の名をつけることを固辞されたが、学生の熱意をくんで最後には承諾された。そして 記念碑にこう記した。「若き日の友情と感激のために」