現在の主流は、空気圧駆動型
このような補助人工心臓は、これまでに日本だけで400例を超える臨床応用が報告されており、大阪で心臓移植が行われた患者さんにも、移植心臓を待つ間は補助人工心臓の装着によって循環が維持されていました。補助人工心臓の適応は、このような移植待ちの方の他、心筋梗塞や心臓の手術の後の循環不全にも広く応用されています。
しかしながら世界的に見ても、補助人工心臓の埋め込み後、補助人工心臓から離脱できるところまで心機能が回復する人は、適応患者の約半分であり、病院を退院するまですっかり回復できる人は、さらにその半分となります。従って、約70〜75%の患者さんは残念ながら最終的に長期生存することができません。といっても、心臓移植によって社会復帰することは可能です。
心機能が回復せず、移植心臓も見つけられなかった場合には、次の循環維持手段が必要となります。そこで注目されるのが、完全埋込型補助人工心臓です。現在、広く臨床応用されている補助人工心臓は、空気圧駆動型が主であり、体外に小型冷蔵庫ぐらいの大きさの駆動装置が設置され、患者さんは空気圧駆動ラインによってこの駆動装置と繋がれて、いわば紐つきの状態とならざるを得ません。現実的にはベッドに寝たきりの状態であり、I C U (集中治療室)に収容されてしまうのが常です。
そのため、駆動装置を含めて完全に体内に埋め込むことができる補助人工心臓が、欧米などでも開発されています。しかし、70kg 以上の体格の欧米人に埋め込み可能であることが開発目標とされ、体格の小さな日本人にどの位の割合で埋め込むことができるか、疑問視されます。