市民のためのベンチャー講座 1

ベンチャー・ビジネスを始めたい人へ

大 滝 精 一=文

おおたき せいいち

1952年生まれ

東北大学経済学部教授

専門:経営政策、経営組織、研究開発管理

起業意欲のムーブメント

 自分で会社を作ってみたい、事業を起してみたいという動きがいま高まっています。それはなにも野心に満ちた若者に限った現象ではありません。最近の「創業セミナー」と銘うった催しに出てみると、女性や中高年の方々が多いことに驚かされます。小さくてもよいから、自分で事業をやってみたいという思いは、市民の幅広い層に拡大しつつあるようにみえます。

 事業を起したいという動機もさまざまです。お金を賭けて豊かな暮しをしたいという欲求が、起業のひとつの動機となっているのはたしかです。しかし、最近の幅広い起業への関心を、それだけで説明するのは難しいようです。経済的だけでなく、精神的にも自立したいとか、長年の自分の思いや夢を起業という形で実現したいと考えている人々は、着実に増えています。中には事業を通して利益を得ることそれ自体を目的にするよりも、むしろそのことを通して社会的に意義のあることを成し遂げたいといった、NPO(非営利組織)的な発想から事業を始める人々もいます。こうした起業に対する多様な動機とエネルギーは、21世紀の日本の発展にとっても大変に重要であると私は考えています。

成功への三つの条件

 ベンチャーという言葉を、あまり大げさに考える必要はありません。何がベンチャーであるのかは、ある程度主観の問題であり、程度の差でしかありません。ここでは、あなたが始めたいと考えている事業がベンチャーだと思っていただければ結構です。

 むしろ事業を始めるうえでの大きな問題は、創業の動機の純粋さとか崇高さが、必ずしもその事業の成功を約束するものではないという点です。事業を始めて軌道に乗せるためには、三つの大切な条件があります。第一は、誰が事業を起すのかということです。いいアイディアがあっても、そのアイディアを信じ実現しようとする意志を持った人がいなければ、事業は成功しません。仮にあなた一人で会社を起す場合でも、誰かの支援なくして会社は軌道に乗りません。創業に際しても、チームワークは極めて重要です。第二は、事業機会とタイミングの問題です。創業の時期は、早すぎても遅すぎてもうまくありません。チャンスの窓が開いている時期を狙った創業が効果的なわけです。第三は、事業を軌道に乗せるためのヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を必要最小限であっても調達することです。この三つがそろって、初めて事業は立ち上がることになります。

ベンチャーといってもいろいろ。社会的意義を求めて始める人も多い。

『東北大学無料法律相談所』

法学部教授 河上 正二

 「東北大学無料法律相談所」の前身は、昭和3年に、故中川善之助先生によって「宮城県社会事業協会無料法律相談所」として設立され、東北大学教官と学生たちを中心に法律相談活動を開始したものにまでさかのぼります。その後、昭和37年からは、東北大学法学部の学友会組織に所属を移しながらも、今日まで活動を継続しています。この70年にわたる相談所の歴史の中で、社会の状況も大きく変化し、世相を反映した相談内容は無論のこと、学生を中心とした無料法律相談のもつ社会的役割にも変化を生じていることは事実です。しかし、現実の法律問題を前に、親身になって来所者の相談に応じ、そこから社会と法のかかわりについて共に学んでいこうとする所員の姿勢は、一貫しているように思います。現在も、約70名の学生たちが、法学部教官やOB・OGの弁護士の協力を得ながら相談活動に取り組んでいます。

 市民の方々が、民事の紛争予防や紛争解決への一手段として役立てるべく、気軽に相談所を訪れていただければと考えています。

 ○相談日時/毎週土曜日 午後1時〜5時(受付:午後1時〜3時)

*事前にお電話による問い合わせをお願いいたします。

 ○相談場所/法学部棟1階演習室

 ○お問い合わせ先/TEL:022-217-6242