東北大学・東北大学萩友会
第23号(2010年11月)

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アジア初。欧州大学協会(EUA)の「大学評価」を受審。
「世界リーディング・ユニバーシティ」への自己改革のさらなる前進。
澤柳政太郎初代総長の『文明の先頭に立って進まんとする東北大学』の建学理念は健在でした。


東北大学の精力的な訪問調査をおこなったEUAの評価委員
氏 名 役割・略歴
ルーク・ウエーバー教授 チーム統括。元ジュネーブ大学学長(スイス)
エリック・フロメント教授 元リヨン大学学長(フランス)、元EUA会長
ジーン・ルイス・ヴァンヘルウェイム教授 ブリュッセル自由大学学長(ベルギー)
シビル・ライヘルト博士 チームコーディネーター。
スイス・チューリッヒのヨーロッパ高等教育コンサルタント会社のディレクター
 「初めてを、始める」。
 この精神が、東北大学の伝統、いわば「DNA(遺伝子)」です。
 今回もまさに、アジア初の先進的な試みへの挑戦でした。
 EUAの「機関別評価プログラム」の受審です。欧州の著名大学の学長経験者でありEUAの重要メンバー3名を含む評価委員4名の、東北大学訪問による聴き取り調査などが実施されました。

 2009年10月、2010年1月の2回、計7日間。内5日間は、朝8時45分にホテルを出て、毎日夜9時30分まで学内視察や面談調査をこなす熱心さ。食事もインタビューのための会食にあてる、実に精力的で、真剣かつ熱心、徹底した調査でした。大学役員や各部局長はもちろん、学生、大学院生、留学生、卒業生そして官庁や企業等の外部有識者からの率直な意見聴取や質問なども実施。最終日には、東北大学役員や部局長を対象に、評価項目の口頭報告・質疑がなされ、この評価による第一段階の率直な助言を大学全体で共有する直接の体験を持つこともできたのです。

 『インタビューの受け答えの体験自体、すでにたいへんな刺激になり、勉強になった。このような意見が学内から寄せられました』と、総長補佐の岡田益男評価分析室長。今回の受審を提案した実務担当の責任者です。

 日本全体にも言えることですが、特に日本の大学で、もっとも苦手な分野と言われるのが「評価」でしょう。
 その日本にあって、なぜ東北大学は、厳しさと徹底調査で定評ある「欧州大学協会(EUA)」の「機関別評価プログラム」を受審することを決断したのでしょうか。

 それは、井上明久東北大学総長の「井上プラン2007」に代表される、文字とおりの「世界リーディング・ユニバーシティ」を実現するためには、国際的な視点からの優れた外部評価を受けることが必須との判断と使命感からでした。
 目標達成のための課題がより客観的に抽出でき、そのための的確な改善策を提案・協議する、得難い機会をも創れるからです。
 EUAなら、現代の大学へつづく大学発祥の地欧州の長い歴史の経験を持ち、参加各国の文化という多様性をも体現しています。
 さらに、米国の大学評価機関などに比べ、ブラジルや南アフリカという異なる文化圏の大学評価の経験もあり、厳しくも的確な評価結果の実績には定評がありました。

 この評価を受けるため、東北大学では、「世界のトップ30位入り」という目標を達成するための、東北大学の「強み(Strengths)」、「弱み(Weaknesses)」、「機会(Opportunities)」、「脅威(Threats)」という内部実態から外部の社会要因までを分析。
 つまり「SWOT分析」のワーキンググループをつくり、大学の現状と今後の課題を、自分たちで徹底して洗い出す契機をも得たのです。東北大学のマネジメント、財政、教育、研究、社会貢献などの自己凝視・自己点検の好機でもありました。その結果を事前に英文による報告書などとして提出。東北大学のすべてを、正直にさらけ出したのです。そのため、EUAへの自己評価書はほとんど「非公開」となっています。外聞をはばかり、表面を飾るような報告内容であっては、的確な評価などできません。膨大な手間、時間、そして資金をかけて、わざわざ評価を受ける意味などなくなるからです。

 さて、結果は、どうだったのでしょうか。すでに、興味深い「評価報告」がEUAのホームページにて公開されています。(http://www.eua.be/iep/who-has-participated/iep-evaluation-reports.aspx)。
 詳しい紹介はそちらに譲りますが、東北大学の予算規模が、世界の大学の頂点の一つ英国ケンブリッジ大学の運営資金を上回っている事実を指摘。理論的には、目標のトップ30位以内に入ることは可能、との判断でした。

 しかし、トップ級の大学や東北大学に並ぶ世界の大学が、さらなる不断の改善努力に意欲的に取り組んでいる現状を直視すると、今後の、果断で、厳格な機関運営の取り組みが大きな課題と指摘。全学挙げての認識の共有と懸命で徹底した努力と改善の実行にすべては懸かっているが、東北大学は、その野心的なビジョンと目標を必ずや実現していくであろう、との評価内容でもありました。

 全体的には、「国際研究型大学にふさわしい人材を、構造的に獲得、育成できる組織となれるか」との、まさに「大学とは、人なり」を再認識させられた結論とも言えるかもしれません。

 今回の貴重な評価結果の内容が、東北大学に特有のものなのか、あるいは日本の大学に共通するものでもあるものなのか。
 この点の精査も必要でしょう。

 『そのことをより的確に分析するためには、EUAの大学評価を、日本の他の2、3の大学にもぜひ受けてもらいたいですね。そうすれば、東北大学の今回の勇気ある初の受審が、日本の大学全体にとってもさらに有意義な、意味のあるものになるでしょう』。岡田評価分析室長の、日本の大学全体への問題提起が印象的でした。

 とにかく、評価結果はもちろん、評価を受けるという過程自体が、すでに大きな収穫を東北大学にもたらしてくれたようです。
 『EUAの評価委員が、まるで全員が東北大学出身者であるかのような、実に熱心で親身、真剣な訪問調査と助言をしていただいたことに、本当に感銘いたしました』。
 全日程を、評価委員に同道した岡田評価分析室長の実感です。


 『大学とは、新たなる進歩を企て、文明の先頭に立って進まんとするものである』。
 これは、澤柳政太郎東北帝国大学初代総長の、東北大学の建学の理念につながる言葉です。
 今回のアジア初のEUAの大学評価の受審は、まさに東北大学精神を発揮した挑戦と言えます。東北大学の伝統は、健在でした。

 世界の大学トップ30位入りを目指す「井上プラン」実現への確かな前進の手掛かりと手応え…。
 今回のEUAの「大学評価プログラム」の受審による成果です。

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