東北大学・東北大学萩友会
第23号(2010年11月)

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医薬品・健康食品の正しい使用を支える。
NPO法人ふぁるま・ねっと・みやぎ 理事長 
戸田 紘子(とだ ひろこ)
◇社会との関わりを考え始めた学生時代
 薬学科は当初医学部に創設され、その3年目の1959年に入学しました。当時は校舎を確保するのが困難な時代だったのでしょうね。1回生、2回生の先輩方は、教養部時代には三神峯へ秋保電鉄で通い、遠くて苦労されたようです。3回生の私たちからは、川内の教養部に通うことになりました。
 教室は進駐軍が使用していたかまぼこ型の兵舎などでしたが、緑の芝生が広がり、のんびりとした雰囲気でした。まもなく60年安保の学生運動が席巻し、私も何かしなければとデモに参加したりしたものです。社会へ目を向け始める契機となりました。
 学部の授業は、現在の星陵キャンパスで受けました。当時、医学部が他の目的で計画していた建物を急遽、薬学科に充当することになったと聞いています。私たちが学んだ新築の鉄筋コンクリート3階建ては、周囲の古い建物の中でぴかぴか際立っていました。4年生になると教室(講座)に配属されるのですが、印象に残ったのは、教室毎に雰囲気が違っていたこと。私は薬化学教室の加藤鐵三先生に学んだのですが、教職員や学生同士がとても親密で研究をはじめ遊びにも何かと協力し合ったものです。
 卒業後、片平キャンパスの非水溶液化学研究所に研究生として入り、その後助手を務めました。それ以降は、先輩の助言で環境分析を手がけたり、医薬品試験センターに勤務したりしましたが、これぞ薬剤師の仕事と思い定めて、最も長く続けたのは、OTC薬(一般用医薬品)販売の仕事です。通算30年以上にわたっています。

◇正しい医薬関連情報と活用法を広めるために
 医療が進んだ現在、一方では、自分の健康は自分で守るセルフメディケーション(Self-medication)を進めようといわれるようになりました。こうした状況の中、市販されている薬や健康食品、サプリメントなどの中には、裏づけがないのに効能を誇張したり、それを飲めばすぐに治ると表現したりする誇大広告や不適切な説明などを付加して販売しているものが多くあります。時には命に関わるリスクがありながら、それが見過ごされているケースもあり、問題があまりに多いのです。
 そのような不確かな情報をチェックし、適切な使用を支援するためにNPO法人「ふぁるま・ねっと・みやぎ」を立ち上げました。間違った情報の軌道修正や健康被害の未然防止のため、正しい健康食品情報や判断の仕方などを冊子にまとめて頒布したり、出前講座に出向いてお話をしています。
薬や健康食品で健康被害が起きても、適切な相談窓口が見つかりにくい現状があり、時に死亡事故など重大な相談等も寄せられます。表面には見えてない問題がたくさん内在していることは十分に考えられます。
 セルフメディケーション時代においては、薬剤師は医薬品や健康食品の正しい情報や活用法について相談に乗り、サポートできる立場にあるので、社会の中で薬剤師が果たす役割は大きいのです。現在、薬学教育は6年制になり、来年には第1回生が社会に出ますが、その多くは調剤を主とする保険薬局で働くと思われます。OTC薬販売の現場に薬剤師が少なくなっているのが残念です。本学薬学部の6年制コース(薬剤師)は20人と聞いており、現場で出会うのは難しいようです。

◇東北大で得た同窓ネットワークが財産
 東北大学で学ぶことで得たものはいろいろありますが、何と言っても人脈ですね。仕事においても、先輩が手を差しのべて下さったり、現在の「ふぁるま・ねっと・みやぎ」の活動も、先輩、後輩のたくさんの協力があってこそ成り立っています。
 今年まで3年間、東北大学薬学部で非常勤講師として講義を行ってきましたが、薬学で学ぶ学問と実生活の現場を結ぶ視点で話しをしました。専門分野の内側にこもるのではなく社会と関わりながら学んでほしいとの思いから、社会の風を送り込む役割を果たせればと思いましたが、学生さんに届いたかどうか。医薬品の研究や開発に力を尽くす際にも、常に社会の空気や動きを感じながら研究に励んでほしいと願っています。
Profile :戸田 紘子(とだ ひろこ)
1963年 東北大学医学部薬学科卒業
1963〜66年 東北大学非水溶液化学研究所・研究生
1970年 学位取得(薬学博士)
1966〜72年 東北大学非水溶液化学研究所・助手
1973〜76年 医薬品一般販売業 勤務
1977〜82年 環境計量証明事業所(環境分析)勤務
1983〜84年 (社)宮城県薬剤師会・医薬品試験センター勤務
1985年〜 医薬品一般販売業 勤務
2004年〜 NPO法人ふぁるま・ねっと・みやぎ 理事長
東北大学薬学部非常勤講師

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